世界のメディアが背中を押してくれた
私の立てた移民国家ビジョンを真っ先に評価し、世界に発信したのは外国人ジャーナリストたちだった。自分を信じて正しい道を歩むよう背中を押してくれた。国内の知識人から相手にされない状況が続く中、ワシントン・ポスト紙、エコノミスト誌など世界を代表するメディアの評価がどれほど私の心の支えになったことか。
「移民政策のエキスパート」「移民革命の先導者」「ミスターイミグレーション」「移民1000万人の坂中移民政策研究所長」などの形容詞つきで坂中英徳の移民政策論を世界に広めてくれた。
世界のジャーナリストから身に余る評価を受け、人口崩壊の脅威が迫る日本を移民政策で救う立場にあることを思い知らされた。また、世界の人々が日本の移民開国を待ち望んでいることがよく分かった。いっぽうで、日本を移民国家へ先導する責任の重圧にあえぐ日々が続いた。
以下に、坂中評価の先頭を切った記事のさわりの部分を紹介する。2006年3月のジャパンタイムズに掲載された「The doomsday doctor」(救世主)という見出しの評論である。まず、その「救世主」という恐れ多い表題に驚いた。それを見て、日本の存亡の危機を救う責任の重さに身の縮む思いがした。その日から日本の救世主という重い十字架を背負って生きてきた。
この長文の評論を投稿したのは英国の『ザ・インディペンデント』東京特派員のディビット・マックニールさん。日本外国特派員協会の重鎮は健筆をふるって今も健在である。
〈坂中は最近、少子高齢化による地域社会の崩壊の危機と、牢固とした低い出生率(2004年の出生率は1・28に低下)に警鐘を鳴らし、官僚の殻を破って「50年間で2000万人の移民受け入れ」を示唆した。
坂中は『入管戦記』という著書で、慎重に言葉を選び、かつユートピア物語と断っているが、「日本は多民族社会になり、アジア全域から移民をひきつける国にならなければならない」と初めて提案した人だ。〉
その日から13年余が過ぎた2018年10月12日。政府が移民立国に向かってダイナミックに動き出した。政府が世界の人々に向けて移民国家宣言を発したとき、ワシントン・ポスト紙、エコノミスト誌をはじめ世界各国のメディアがどのように報道するかを想像すると私の胸はいっぱいになる。