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TPPへの加盟と移民開国 

平成の開国劇において環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟は序幕にすぎない。内閣の移民開国宣言があってはじめて終幕を迎える。

明治の開国は、西洋文明を積極的に取り入れた「文明開国」であった。戦後の昭和の開国は、貿易と資本の自由化を行なった「経済開国」であった。今まさに国民的課題に浮上した当代の開国は、人口危機におちいった日本を元気にする「移民開国」である。日本が最後まで拒み続けてきた「人の開国」だ。

日本が移民立国を国是とする国になれば、人の移動・外交・経済・安全保障の分野で移民の出身国との関係が強化される。移民外交と移民協定が日本外交の柱の一つになる。

移民開国はすなわち「移民革命」である。それは人口減少期に入った日本の究極の革命の嚆矢となる。日本人の生き方から政治・社会・経済のあり方までのすべてを、根本的に揺り動かす日本革命に発展する。

日本がTPPに加入するとともに、50年間で移民1000万人を秩序正しく入れる「移民大国」の道を歩めば、移民立国の理念を共有する主要国が環太平洋地域に集結する移民国家連合が形成される。それにとどまらない。加盟国の間で人の移動が激しくなり、各国の国民の間に一体感が醸成され、人類の夢である「太平洋共同体への道」が開かれる可能性がある。

私は2019年2月7日、カナダのトロント大学において、「日本の新しい政策」の演題で、人口危機に直面する日本の移民政策について語った。

5名のトロント大学教授、約60名のトロント大学の学生が私の話に耳を傾けた。講演終了後、多数のコメント、感想が寄せられた。「大変感銘を受けた」「坂中さんが提唱する移民国家ビジョンは素晴らしい」など称賛の言葉をいただいた。

講演の前、世界的に著名なカナダのジャーナリストで、「カナダは今の3倍の移民を受け入れるべき」と主張する著作があるDoug Saunders氏の取材を受けた。私から、「日本の移民国家ビジョンの特色」「カナダと日本が協力して世界の移民政策を牽引していくことの重要性」について語った。

話を終えて意気投合したと感じた。別れに際して Saundersさんは、カナダ最大の新聞:「THE GLOBE AND MEIL」のコラム欄に「坂中英徳移民政策論」につて書くと述べた。また、カナダの移民政策担当大臣を紹介したいと述べた。

初めてのカナダ訪問で私はカナダ人の友達ができた。「移民政策」という共通項を通してカナダの知識人と日本の知識人は緊密な関係を築けると確信した。

日本政府にお願いがある。日本がTPPへの加盟と軌を一にして移民国家宣言を行ない、日本はカナダ、オーストラリアなど移民国家の先輩国と連携して環太平洋地域における人の移動の拡大と世界平和に貢献すると世界にアピールする。同時に、非欧米社会に誕生する異色の移民国家の存在意義を強調する。移民国家・日本に対する国際社会の評価は一気に高まるだろう。