2010年代――移民国家論の形成と発展

坂中提案

法務省仙台入国管理局に勤務していた1997年ころ、日本が10年以内に迎える人口減少社会の移民政策について真剣に検討する必要があると考えていた。人口動態と国のあり方と移民政策は密接に関連するからだ。

仙台、福岡、名古屋、東京の各入国管理局長時代、法務省で会議が開かれるたびに、人口減少時代の日本の生き方として、人口が減っても移民を入れない「美しい衰退への道」と、人口の減少分を移民の受け入れで補って「活力ある社会を維持する道」のふたつの選択肢があると発言していた。

そのアイディアを理論的に発展させた政策提言が、2004年1月の『中央公論』(2004年2月号)に載った論文「外国人受け入れ政策は百年の計である――目指すべきは『小さな日本』か『大きな日本』か」である。しかし、この論文は一握りの研究者と外国人ジャーナリストに注目されただけで国民からの反応はなかった。

それから11年後の2015年。奈良時代から続いた移民鎖国時代が終焉を迎えようとしている。2009年に一般社団法人移民政策研究所(以下「JIPIと略称)を設立し、『日本型移民国家の構想』(移民政策研究所、2009年)を筆頭に一連の著作を発表するとともに、2013年4月からは、JIPIのホームページに移民政策関係の短文を精力的に投稿した。移民政策研究の成果を次々発表した効果が現れた。たとえば、インタ―ネットの世界で移民国家をめぐる議論が活発化した。「移民」「移民政策」「移民革命」などの言葉が一般的に使われている。

2015年に入り、英国BBC放送、オーストラリア公共放送、ロイター通信、ブルームバーグニュースなど海外メディアの取材が増えた。私のところに見える外国人記者はみなさん、日本の人口崩壊の脅威を正視し、移民政策の歴史的必然性を理解し、日本の移民開国への期待感を示す。

なお、保守を代表する雑誌『WiLL』(2015年1月号)に「移民国家で世界の頂点をめざす」の表題の小論文を寄稿した。国民世論を喚起したいと思って書いた移民興国論である。この論文をもって移民亡国論者と私との間で移民政策論争が開始された。長年、移民国家論争を国民に呼びかけてきた私の執念が実った。
 

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