2000年代の外国人政策

坂中提案

入管時代の著書『日本の外国人政策の構想』(日本加除出版、2001年)の中に「人口の激減にどう対応するか、真剣な国民的議論を」と題した小論が入っている。久しぶりに読み返してみて、2000年当時の私の立場・見解を率直に語っていると思った。以下に全文を掲げる。私は2007年以後、「移民50年間1000万人構想」を語ることになるが、この小論文から15年前の私の問題意識と真意がどのあたりにあったのかを読み取っていただければ幸いである。

〈私は外国人の出入国管理を担当する立場から、人口減少社会に対応するための日本国の基本方針とそれに連動する外国人政策について、選択肢を提示することができるだけである。人口減少時代を生きる日本が「小さな日本」と「大きな日本」のどちらを選ぶのか、これは21世紀の日本国の基本的な生き方と国家体制(民族的構成)を決めるものであるから、国民的議論を始めてほしいと願っている。

いずれの生き方を選択しても、国と国民は重い責任を背負って険しい道を歩まなければならない。

あえていえば、どちらの方がより現実的かという点では、「大きな日本」ではないかという気がする。これを選択する場合、外国人を大規模に受け入れるため、日本社会の外国人受入れ態勢を十分整備する必要がある。その上で、多民族の日本国民への統合を実現し、国民国家秩序を維持するという難題に立ち向かわなければならない。しかし、これまでの成長社会で形成された日本人の生き方と日本経済の体質の根本的な変革を迫られることはないであろう。現在の成長型の社会制度と産業構造の骨格は維持される可能性が高いと思われる。

ただし、たとえ外国人人口で補って人口減少問題を回避できたとしても、日本経済はいずれ環境問題、資源問題等の壁にぶつかり、成長が止まる状況に立ち至ることを覚悟しておく必要がある。

「小さな日本」は理想論に近いものというべきかもしれない。それを達成するには、日本人の価値観、日本の社会経済制度等を根底から見直す必要がある。例えば、日本人の生き方・生活様式から社会制度・産業構造に至るすべてを、縮小していく社会にふさわしいもの、小さくなった枠組みに収まるものに改めなければならない。更に、国際人口移動が活発化する中で海外からの人口移動を阻止するため、日本は一種の人的鎖国政策をとらなければならないであろう。

しかし私は、こういう選択肢があるのだということを強調しておきたいと思う。21世紀の世界においては人口爆発、食糧危機、資源の枯渇、環境破壊など人類全体の運命に関わる問題がますます深刻になると予想される中で、人口の減少を肯定し、「小さな社会」を作ろうとする日本の試みは、地球文明のあるべき姿を先取りする画期的な取り組みであると評価されるに違いない。〉

« »