西洋文明の時代から日本文明の時代へ

西欧における移民処遇の歴史は、アフリカの黒人を奴隷として新大陸に強制的に移住させた原罪を背負っている。これは世界人権史に残る汚点である。そのうえ、現在の欧米諸国は移民の力を借りなければ経済と社会が成り立たない状況に追い込まれている。
明治以後、日本が模範として学んできたヨーロッパ文明、アメリカ文明とはいったい何だったのか。移民政策に限って言えば、人の道と正義に著しく反するものであった。それにたいして、和の心がつまった日本人に生まれたことを誇り思う移民政策研究所所長が提唱する移民政策は、移民を人類同胞として温かく迎えるものである。
日本は古来、「和をもって貴し」(十七条憲法)を国の根本理念としてきた。
飛鳥の時代(6世紀末から8世紀初めまで)は、今の言葉でいえば「多民族国家」の時代で、縄文時代・弥生時代から居住していた先住民族、朝鮮半島や中国大陸から新たに移住してきた民族、南方地域から黒潮の流れに乗って渡ってきた民族など、様々な民族が日本列島に住んでいたと考えられる。その後は令和の今日まで、太古の昔から日本各地に定住する人々は、大量の異民族の流入も外敵の侵入も受けなかった歴史の幸運にも恵まれ、民族の融和を旨とする「和の精神」を長い時間をかけて熟成させてきた。
ゆえに、古代から綿々として和の心が刻まれている現代の日本人の心の中には異なる民族を「夷狄(いてき)」とみなす観念もない。中華思想の洗礼も受けていない。異なる民族に対する排外的感情も優越的感情も比較的希薄である。
「全人類はみな同じ人間である。宗教や文化、皮膚の色の違いに関係なく、世界の人々を平等に受け入れる。国民は思いやりのこころで移民を歓迎する」と、内閣総理大臣が世界の人々と約束してはどうか。日本列島に産声をあげる移民国家が、人類共同体の理念を前面に出して世界にアピールすれば、それは異なる宗教に対する偏見と白人至上主義の考えが根強く残る欧米の移民政策の退場を迫るものになろう。
近未来には、移民政策に関する思想の根本的な違いが分岐点となって、西洋文明の時代から日本文明の時代へと、世界文明の潮流に変化が起きることも考えられる。