第一次産業地帯は生き残れるか

2009年1月、全日本自治団体労働組合(自治労)の機関誌『月刊自治研』(2009年1月号)は、「人口減少社会が目前に迫る。少子高齢化に加え、世帯の変容や社会不安も進む中、自治体は、地域の未来像をどう描くべきか。政策転換の舵切りに向けたシナリオを模索する」との立場から、特集「わがまちの人口」を組んだ。その中の一篇として『日本型移民国家の提案』の表題の小論が載った。同誌は私の小論文のポイントを次のように紹介した。
「超少子化と超高齢化という閉塞状況を打開するために、50年間で1000万人の移民受け入れを提案したい。外国人を育て、安定した職を提供し、永住者として受け入れる」
同誌の編集部は、自治労の関係者になじみのない「坂中英徳」のことを、次のように紹介した。
「1970年に法務省へ入省。75年に入国管理局論文募集で『今後の出入国管理行政のあり方について』が優秀作となり、その後『坂中論文』と呼ばれる政策提言を法制化。東京入国管理局長などを歴任し『ミスター入管』の異名を持つ」
この論文は地方自治体の職員に深刻な影響が及んだ可能性がある。2019年6月現在、超少子化に伴う人口崩壊の脅威が農山村地域を直撃している。間もなく第一次産業地帯の地方自治体が次々と消失危機に見舞われるのは必至だ。当然、自治労の構成員である地方公務員の多くが解雇される。自治労が移民政策に賛同する立場を明らかにし、労働組合の移民アレルギーがくつがえる日が近いと予感する。
以下の文章は『月刊自治研』に掲載された小論文の一節である。
〈日本は未体験の人口減少期に入り、人口危機の重圧が社会全体を覆っている。特に、このままでは負担が重くなる一方の少子化世代(0歳から30歳まで)の未来に暗雲が垂れ込めている。
この、何とも言えぬ日本社会の閉塞状況を打開し、明るい未来への展望を開くために私たちは何をなすべきか。それは思い切って国を開き、50年間で1000万人の移民を迎えることだ。日本の中に世界の「人材」を取り込むのだ。超少子化と超高齢化の人口問題に『移民立国』で立ち向かうもので、日本の未来を担う少子化世代の心をひきつける国家ビジョンではないか。〉
〈移民の力を借りないと、農村地帯では人材不足が深刻化し、地域崩壊の危機に直面する。移民のエネルギーを生かして農村社会を活性化しようというのであれば、移民を将来の国民として処遇しなければならない。また、安定的に仕事に従事してもらうためには、大規模農場に転換するなど農業経営の抜本的な改革も必要だ。既得権益側の抵抗もあるだろうし、様々な痛みも伴う。それでも移民政策は、人材を供給し、自給率4割の日本の食糧問題を解決し、農業を立て直す機会をもたらす。〉