移民経済学序説

坂中提案

一国のGDPは人口×所得であり、人口×消費である。技術や生産性の向上もプラス要因だが、それはわずかなものだ。人口が減ればGDPは縮小する。人口が増えればGDPは拡大する。以上は経済学の常識である。一国の人口が出生者と死亡者と移民の三要素で決まることも世界の常識である。

今日、未曽有の人口崩壊が迫る日本は、1000年以上続く移民鎖国体制を守り、人口の自然減に全面的に従って経済が縮小してゆく道と、人口の自然減を移民の受け入れで補って活力ある経済大国の道と、そのどちらを選択するかの分岐点に立っている。

実は、猛烈な人口減少時代に入った日本では、移民人口分の経済成長をもたらす移民政策こそ最有力の経済政策なのである。

移民政策の理解者である日銀幹部の話によると、日本の経済学者の7割が、人口が激減しても国民一人当たりの所得は変わらないから心配はないと言っているそうだ。よくもそんな無責任なことがいえたものだ。机上の空論以外の何物でもない。

50年間で生産人口が半減する日本。所得の担い手が減る一方の国が、国民の所得水準をどうして維持できると言えるのか。人口崩壊によって多くの産業がばたばたつぶれていくというのに、国全体の生産力を倍増できると本気で考えているのか。

生産人口減少下の経済のあり方を左右する「人口と移民」の問題意識に欠ける経済理論は人口増加時代の遺物だ。生産人口を増やし、消費を拡大し、経済成長を促す効果のある移民政策に関心のない経済学者の存在理由はないといわなければならない。

人口と移民が眼中にない経済学の退場を勧告する。代わって、人口と移民政策と経済成長の関係を理論的・実証的に研究する「移民の経済学」の登場を期待する。

わたしは40年前から、「日本の人口動態は『出生者』と『死亡者』と『移民』の三つのファクターで決まる」と言い続けてきた。こんな世界の知識人の常識も日本の知識人の頭の中にはインプットされていないのではないかと疑いたくなる。

人口が今より4000万人減る50年後の日本の国家像を描けといわれても、移民政策を抜きにしては、絶望の国家ビジョンしか浮かばない。だのにどうして、人口ピラミッドが崩壊へと突き進む日本の未来にも、人口秩序を正す効果のある移民政策にも、日本の知識人の大半が目をそむけているのか。

日本の知識人の多くは移民が入ってくると純粋無垢な日本文化が汚されると内心思っているのではないか。彼らの本当の顔は社会科学者ではなく、反移民感情に凝り固まったナショナリストではないか。

反移民文化の世論形成に熱心な知識人が国家存亡の秋に手をこまねく態度をとり続ければ、日本を二流国家に墜落させた張本人と、50年後の日本人の指弾を受けるだろう。

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