移民経済学のすすめ

坂中提案

私は2008年9月、メリルリンチ日本証券主催の「メリルリンチジャパンコンファレンス 2008」で講演した。内外の機関投資家の前で、移民1000万人構想を中心に移民政策論を展開した。

講演終了後の質疑応答で、ある外国機関投資家が、「日本政府が移民国家宣言をすれば、東証株価は1日で1000円急騰する」と述べたことを覚えている。当時はそういう見方もあるのかと思っただけだったが、最近はそういうことが実際に起きるのではないかと考えている。

2014年に入り、世界の有力投資家がアベノミクスの成長戦略との関係で、「移民鎖国の日本は売り」という発言を繰り返している。彼らは「人口危機の問題になんら有効な手を打たない日本は投資対象国として魅力がない」と警鐘を鳴らしているのだ。これがウォール街に生きる機関投資家の冷厳な投資行動であると理解すべだ。

一国のGDPは人口×所得(消費)である。技術や生産性の向上もプラス要因だが、それはわずかなものだ。人口が減ればGDPは縮小する。人口が増えればGDPは拡大する。

ところで、一国の人口動態は出生者と死亡者と移民の三要素によって決まる。出生者の数が死亡者の数を下回る人口の自然減が続く国にあっては、移民政策をとらないかぎり経済は縮小の一途をたどる。

実は、人口激減時代の日本においては、移民人口分の経済成長をもたらす移民政策こそ、最有力の経済政策なのだ。

たとえば、わが国が50年間で1000万人の移民を計画的に入れる政策を実行に移すとしよう。移民は生活者であり消費者であるから、移民関係の衣食住、教育、雇用、金融、情報、観光などの分野で大規模な市場と需要が創出され、さまざまな移民関連産業が生まれ、移民人口分プラス乗数効果分の経済成長が見込める。最終的には、1000万人の人口を擁する新国家の誕生とほぼ同じ経済効果が期待できる。

また、1000万人規模の移民に税金と社会保障費の負担をお願いすれば、超少子・超高齢社会の社会保障制度も国家財政も何とか持ちこたえられるだろう。

人口危機時代の社会保障制度を守り、財政危機を乗り切るには、抜本的な社会保障と税の一体改革の実施と併せて、所得税・消費税・社会保障費を負担する生産人口を計画的に増やす「移民政策」が必要不可欠だ。

さらに 、移民市場の活性化の呼び水となる資金を移民に貸し出すことで移民経済の心臓部の役割をはたす「移民銀行」の創設が必要である。移民銀行は、移民の定住支援に特化した銀行である。日本に身寄りのいない移民が、生活基盤を整え、学校で勉強し、起業するための資金を無担保・無利子で貸し付けることを主たる業務とする。移民銀行が行う融資から移民の経済が動き出す。

生産人口と消費人口の減少が続く時代の持続可能な経済と財政には、生産人口と消費人口の増加をもたらし、移民産業を生みだし、経済・財政の安定に資する移民政策が欠かせない。

人口崩壊の危機が深まる日本には、人口と経済と移民の関係を科学的に研究する「移民の経済学」の助けが必要である。移民政策と経済成長の関係、移民政策の経済的効果、移民政策と海外の投資家の対日投資行動の関係などについて調査研究する移民経済学者の登場を期待する。

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