「移民社会の理想像を求めて」(紹介文)

この本は、人類共同体哲学が生まれるまでの歩みと、人類共同体哲学の世界展開についてつづったものである。
世界の識者からよく聞かれる質問、たとえば「坂中英徳は何者」「人類共同体哲学とは」の問いに正面から答える論文が含まれている。
2021年現在の移民・難民をめぐる世界情勢を概観すると、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、ニュージーランドなどの諸国で異なる人種と宗教に対する排他的な考えの持ち主が繁殖中である。世界は人類存亡の危機の時代に入ったのではないか。第二次世界大戦後の国際法秩序が崩壊に向かう兆候ではないか。危機感がつのるいっぽうである。最新作をもって反移民主義者や人種差別主義者がわが物顔で闊歩する世界にしてはならぬと世界の知性に訴える。
しかしながら移民鎖国のイデオロギーを墨守している日本の国のあり方こそ、日本社会のみならず国際社会にとってもよほど大きな問題と指摘しなければならない。移民の受け入れのあり方に関して先進国が苦闘する中でひとり日本が移民鎖国の温室のなかでぬくぬく生きる時代は終わった。
国内に目を向けると一刻の猶予も許されないほど事態は切迫している。人口危機が深まる一方の日本丸は沈没寸前の危険水域に突入した。最近の私は「これほどまで人口危機が深まると何もかも遅きに失した。もはや安楽死を待つのみ」との思いが深まる。
たとえ日本が今後50年間で1000万人の移民を入れても3000万人の人口は確実に減る。人がいなくなった地方自治体の消滅や、人材獲得が困難になった中小・零細企業の倒産が相次ぐ。トヨタ自動車などの世界企業も専門職や技術職を確保できなくなり、国際競争力が一段と低下する。自衛隊・警察・消防も要員の獲得が難しくなって国の安全保障体制の一角が危機に瀕する。
かけがいのない国を存続させるために私たちは何をなすべきか。何ができるのか。私の答えは決まっている。直ちに移民の入国の扉を開くことだ。世界人材を日本社会の中に取り込むことだ。国民が心を一つにして世界の鏡となる移民社会をつくることだ。それしか日本の延命策はない。
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