移民政策を欠く日本経済と日本財政は危険水域に陥る

坂中提案

消費税率の引き上げをさらに2年半延期しなければならないほど日本経済は窮地に陥っていることを知って驚愕し、日本経済の先行きに対し大きな不安を感じる。また、これで消費税率を10%以上に引き上げることは政治的に不可能になったと言わざるを得ず、社会保障制度の崩壊と財政破綻の恐れが現実味を帯びてくると予感する。

生産人口と消費人口の激減が続くなかで、移民政策を欠くアベノミクスが日本経済を成長軌道に乗せるのは至難の業であると考える。日本銀行がマイナス金利の導入など大胆な金融緩和策を次々と打ち出しているが、内需を拡大し、実体経済を活性化させることには成功していないようだ。当然である。人口減少問題の解決と、細る一方の内需の回復を日銀に期待するほうが間違っている。

いまこそ、戦略的に移民を受け入れ、多様性を新たな力とする「移民ノミクス」(『日経ビジネス』(2016年4月4日号))の出番である。

日本政府が移民鎖国のイデオロギーをかたくなに守るかぎり、働き手の減少と消費の低迷が続くので成長戦略は立てられない。日本政府が移民政策はとらないという立場に固執すれば、経済成長どころか、日本経済は危険水域に陥ると断言してはばからない。

日本人が移民はノーという時代錯誤の考えを改め、政府が50年かけて1000万人の移民を計画的に入れると決断すれば、移民関連産業が勃興し、巨大な移民市場が成立するであろう。移民政策がもたらす経済効果は極めて大きいと考えている。一例を挙げれば、一人の移民の消費額は一人の外国人観光客の落とす額の10倍以上にのぼるという試算もある。

安倍晋三内閣が移民立国を宣言すれば、まず移民に住宅を供給する不動産業や料理を提供する外食産業などへの直接投資が増える。移民が入国し居住するようになると、移民は生活者・消費者であるから、衣食住関連に加えて、自動車、電気製品、情報機器など高額の生活関連商品を購入する。日本語の勉強などの教育費も相当な額にのぼる。それらが新たな需要と供給を生む相乗効果によって移民市場が拡大してゆく。

また、国内需要の拡大と国際人材の安定的確保の見通しが立ち、日本企業の国内回帰の動きが見られるであろう。若年の移民人口が消費人口・生産人口に加われば、自動車産業など製造業の海外移転の動きにブレーキがかかる。海外の機関投資家は、移民政策で人材供給と内需の伸びが計算に入る日本経済の実力を見直し、日本への積極的投資に向かうであろう。

話は財政破綻の問題に移る。2015年末現在の国と地方を合わせた長期債務残高は1000兆円を超えた。万一、人口問題の解決に有効な移民政策を欠き、人口増加期に作られた諸制度を放置し、これ以上の消費税率の引き上げが困難な政治状況が続けば、国が抱える借金は雪だるま式に増える。その場合、10年を待たずして国家財政が破綻し、日本終焉へのカウントダウンが始まるであろう。

国民が自らの身を削り、全員で痛みを分かち合う国民精神が形成されることを前提に、社会保障と税の一体改革を確実に実施するとともに、総計1000万人の移民に税金と社会保障費の一部を負担してもらうこと、それ以外に最小限の社会保障制度を守り、財政破綻をまぬがれる道はないと考える。

結論を言えば、人口激減社会に対応するための抜本的制度改革を行うこと、長期間の緊縮予算を組むことを条件に、入国時には10代・20代が大半の移民1000万人が、納税者および社会保障制度の担い手として新たに加われば、財政再建の見通しが立つだろう。

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