移民政策の本質に迫る

坂中提案

以下の引用文は、1975年の坂中論文の「国際間の人口移動」の章の総論部分をまとめたものである。40年前に書いた論文であるが、国際人国移動と移民政策の本質に迫った快心の作である。

その中で、「先進国においては、豊かな社会が形成され、出生率と死亡率がともに低下し、少子高齢化社会を迎えている。そこでは、製造業、重化学工業等の基幹産業やサービス部門における労働力不足の問題が新たに生じている」と、40年後の日本の姿を的確にとらえている。

移民国家をめぐる議論が本格化する中、この論考が移民問題の本質を考える場合の参考になれば幸いである。

〈人類の歴史を振り返ると、生存のため、あるいはより良い生活環境を求めて人が新しい土地に移り住む、地球規模での人の移動と定住の歴史であったと見ることができる。今日、人類は多くの民族と国民に別れて世界各地に住んでいるが、これらの民族や国民はすべて、より適した生活条件の土地を目指して移住してきた移民と、その子孫によって形成されたものである。人類は今後も、生活の糧を得るため、あるいは快適な生活を求めて、国内のみならず国境を越えて活発に移動し続けることであろう。

 国際間の人口移動(移民)についていえば、地球上に人口分布と経済発展の不均衡が存在する限り、人口稠密で労働力過剰の国から人口希薄で労働力不足の国への人の移動は絶えないであろう。地球上に富の偏在が存在する限り、貧しい国から豊かな国への人の移動は不可避であろう。

 世界の現状を観察すると、開発途上国における人口爆発と社会経済開発の停滞、先進国における人口革命と経済発展という顕著なコントラストが見られる。開発途上国においては、人口激増と貧困の悪循環が生じている。一方、先進国においては、豊かな社会が形成され、出生率と死亡率がともに低下し、少子高齢化社会を迎えている。そこでは、製造業、重化学工業等の基幹産業やサービス部門における労働力不足の問題が新たに生じている。

 他方、移民とその末裔である国民は、いったん地域共同社会(国民社会)を作り上げ、あるいは社会の構成員としての地位が認められると、自分たちの獲得した利益を守ることが第一義的な関心事となる。新たな移民の到来に対しては次第に閉鎖的な態度をとるようになり、ついには門を閉ざしてその移住を防止するに至る。このような入国管理体制は、それぞれの国民(現住者)のなわばり意識(移住希望者の国民共同体への加入を拒否する姿勢)を背景とした一種の縄張り体制と見ることができる。〉

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