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移民国家理論の最高峰を極める人生

1975年に『今後の出入国管理行政のあり方について』という課題論文を書いたことが坂中英徳の運命を決定した。移民政策研究一本の道を歩むことになった。一本の論文が一人の国家公務員の生き方を決めた。

その日から45年の月日が過ぎた。その間、坂中論文の名に恥じぬ論文を書くことを誓い、世界トップレベルの政策論文をコンスタントに書いてきた。それが実を結び、坂中論文の究極の発展形態と言うべき移民国家ビジョンが、人口ピラミッドが崩壊する日本の未来を決める国家百年の大計に発展した。のみならず世界の移民政策の模範となる理論に躍り出た。

坂中論文以後の努力の結晶が40冊余の著作である。これらの作品はすべて国のあり方を根本から問うものである。中でも役人を辞めた2005年以後に書いた25冊余の著作は移民国家の創建を視野に入れた移民立国論である。

移民政策のプロフェッショナルの人生を思い起こすと、とりわけ法務省入国管理局の地方局長時代の1997年から移民政策研究所の所長時代の2020年までの23年間は、日本型移民国家理論の完成に全精神を傾注した。

その成果物が、『在日韓国・朝鮮人政策論の展開』(日本加除出版、1999年)、『日本の外国人政策の構想』(日本加除出版、2001年)、『入管戦記』(講談社、2005年)、『日本型移民国家の構想』(移民政策研究所、2009年)、『日本型移民国家への道』(東信堂、2011年)、『人口崩壊と移民革命――坂中英徳の移民国家宣言』(日本加除出版、2012年)、『日本型移民国家の創造』(東信堂、2016年)、『日本の移民国家ビジョン』(移民政策研究所、2018年)、『日本型移民政策論集成』(移民政策研究所、2019年)などの著作群である。そして2020年2月、英文図書・『JAPAN AS AN IMMIGRATION NAITION』(LEXINGTON BOOKS 2020)を発刊した。これは日本型移民政策理論の世界展開の象徴と位置づけられるものである。

以上、これを要するに、坂中論文・『今後の出入国間行政のあり方について――坂中論文の複製と主要論評』(日本加除出版、1989年)を大黒柱とし、その後に執筆した論文集を支柱とし、これらを体系的にまとめたものが坂中移民国家創成論である。坂中論文を移民政策理論の根本にすえ、それ以後に理論展開した移民政策論文集が骨となり肉となり血となって、ここに日本型移民国家制度の土台となる理論が完結した。

2020年の今は、ルーチンワークとして、移民政策研究所のホームページの「政策提言」欄に短文を掲載している。ここ最近は毎日5000人ほどの人がそれを読んでいると聞いている。移民賛成の世論を盛り上げるうえでその影響力は圧倒的である。これらの人たちは私が最も大事にしなければならない「読者」である。パソコンが使えなかった7年前は、移民政策論文を印刷物にして公にすることしか頭になかった。最近の私は、ホームページを訪れる読み手の存在を意識して文章を書いている。かつての私はより精緻な理論レベルの移民政策、新しいアイディアを盛り込んだ移民政策を立案することにこだわった。今の私は移民政策の詳細をネット社会の友人たちに理解してもらう文章を書くことがより大切だと考えている。表現方法やタイトルの付け方などにもおのずと変化が見られると思う。

もっともその中身はと言うと、テーマも移民政策に特化し、マンネリズムの極まる文章ばかりである。この年になると新鮮な発想は出てこない。移民政策のアイディアマンとしての限界が来たことは自分が痛いほどわかっている。しかしながら、文筆に親しむこと以外に生きる術を知らないので、もうひと頑張りし、死を迎える日まで論文を書き続ける。今しばらく堅苦しい移民政策論文との付き合いをお願いする。

付言すると、ホームページに投稿した短文が相当量に達すると、それを一冊の本にまとめて移民政策研究所発行の私家版として印刷し、友人諸氏に謹呈している。2016年以降に書いた私家本は12冊に及ぶ。これらはすべて憂国の情がつまった遺言的論文集である。
一生を論文になぞらえると、移民国家のあるべき姿を追い求め、起承転結のなった人生であったと言える。学問としての移民政策学をきわめた。世界の最先端をゆく移民政策理論の構築を志した。そしてこのたび移民人生の全部を語り尽くした前記英文図書を発刊した。

坂中移民政策論文集は、砂漠に花を咲かせるような高踏的理論であること、並びに、あまりにも先見の明のある政策提言であることから、世間一般から認知されることはなかった。移民政策研究所の7人の理事と少数の友人以外に、私の移民政策の歴史的意義を認める日本人は現れなかった。だが世界に目を転じると、坂中ビジョンは世界の慧眼の士の注目の的になっている。世界のトップレベルにある移民政策理論の金字塔は永遠に煌めいているにちがいない。100年後の移民黄金時代に生きる世界の若者に夢の実現を託する。

移民政策人生を一言でいえば、無私の日本人が祖国の再建に立ち上がり、移民国家理論の最高峰を目指したということである。親しい友人から「やりがいのある仕事が満載の職業人生を楽しんでいる」と言われた。これ以上の生きがいに満ちた人生はないのかもしれない。