移民国家の建国を静かに待つ

坂中提案

 最新作の「新版 日本型移民国家への道」(2014年10月)の刊行をもって私の移民国家理論体系の完成を見た。2005年は、この本を使って移民国家の議論をリードし、移民国家の建国を静かに待つ。心の広い国民の後押しで移民国家への道が開かれると信ずる。

 1975年の坂中論文以来、自分が立てた政策目標に追い立てられる人生を駆け抜けてきた。問題提起は大論争に発展したが、あまりにも遠大な理想を掲げたので政策実現への道は難航をきわめた。政策提言は日本の知的世界から無視され、四面楚歌の時代が長く続いた。

 命は大切にするが、命に執着しない。もう十分はたらいた。自分のやるべきことはすべてやった。日本の存亡の危機を救う移民国家のグランドデザインを書き上げた。日本国民が世界の先頭に立って人類共同体社会の創成にまい進する近未来を描いた。私の命とひきかえに移民国家の建国の日を迎えることができれば本望である。

 移民政策一本槍の人生行路に悔いはない。ただ最期のいっときは目標から解放された無為の人でありたい。肩書きのない人として人生の幕を閉じたい。

 2012年10月21日の『ジャパンタイムズ』に「移民が日本を救う」という見出しの記事が載った。結びは「革命家とは、いつか自分たちの時代がくるという強い信念を持って生きていく人たちなのだろう」である。

 この記事を書いたマイケル・ホフマン氏は在日歴30年余の知日家である。彼は『日本型移民国家への道』と『人口崩壊と移民革命』のふたつの著作を読み、坂中英徳を「移民革命の先導者」と名付け、移民国家ビジョンを内外に紹介した。

 〈革命家の顔:元法務官僚、元東京入国管理局長の坂中英徳は、日本が崩壊寸前であることを危惧し、「2050年までに1000万人の移民を受け入れなければならない」と述べる。〉

 これが日本を代表する英字紙に掲載されると、日本生まれの移民革命思想は世界の知識人に衝撃を与えたようだ。ジャパンタイムズによると、世界の読者から大きな反響があったということである。

 「反骨の官僚」と呼ばれた元行政官がどうして革命家になったのか。それは偶然のなせる業である。外国人行政に身を投じ、移民政策の立案をライフワークとする日本人が、人口崩壊という「日本史上最大の国家的危機」とめぐり合ったのだ。

 移民政策のエキスパートの道を歩んだのは、奇跡が起きたとしかいいようがない政策論文(坂中論文)を1975年に書いたからだ。その後、移民政策に関する理論的研究と理論の実践を着実に積み上げた結果、世界のジャーナリストから「ミスターイミグレーション」と認められるようになったのだ。

 波乱の職業人生を振り返ると、行政官として一途な気持ちで移民問題と取り組んだが、特別の才能があったわけでも人一倍の努力をしたわけでもない。あたかも天から白羽の矢が立ったかのように移民革命の先導者の地位を授かったということである。

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