目指すべきは世界の模範となる共生社会

坂中提案

日本は古来、「和をもって貴しとなす」(十七条憲法)を基本とする国柄であった。飛鳥時代(593年~710年)の日本列島には、縄文時代から居住している人々、中国大陸や朝鮮半島から移住してきた人々、南方地域から海を渡ってきた人々など様々な民族が住んでいたと考えられる。その後は今日まで、日本列島に住む人々は、大量の異民族の流入も外敵の侵入も受けなかったという歴史の幸運にも恵まれて、民族や文化が違っても同じ人間として平和に暮らすことを旨とする「和の精神」を発展させてきたのだと思う。そんな歴史の恩沢を受けて、現代の日本人には、異なる民族を「夷狄」とみなす観念もないし、外国人に対する排外的な感情も希薄なのだと認識している。

日本人は多様な価値観を受け入れる寛容の遺伝子を受け継ぎ、日本社会は和を重んじる精神風土を育んできた。たとえば宗教を見ても、神道、仏教、キリスト教などの神々が共存している。

2007年7月、政治学者で日本移民政策史が専門のテリー・E・マクドゥガルスタンフォード大学教授(当時)と、移民1000万人構想をめぐって長時間議論した。1975年の坂中論文以来の知己である同教授は、「日本人には寛容の心があり、日本には和の精神で外国人をもてなす良き伝統があるから、坂中さんの移民受け入れ提案は成功をおさめるだろう」との見解を示された。私にとって誠にありがたい話であるが、それをやり遂げるため国民にお願いがある。

日本民族と他の民族が互いの立場を尊重しあって生きる社会、すなわち「多民族共生社会」をつくるという国民の覚悟がいるということである。そのとき日本人に求められるのは、自らの民族的アイデンティティを確認するとともに、異なる民族すべてを対等の存在と認めて待遇することである。日本民族の根本精神を堅持するとともに、少数民族の固有文化を尊重しなければならない。

世界の諸民族が移住したいと憧れる国は、とりもなおさず国民が日本人であることに誇りを持つ社会である。八百万の神々を信仰する寛容の心が根本にある日本人は、1000万人の移民と心を合わせて、世界の模範となる共生社会をつくると確信している。

« »