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毎日新聞の記事(元入管局長のビジョン)

毎日新聞の「風知草」(12月3日、特別編集委員山田孝男)の「元入管局長のビジョン」

「坂中英徳・元法務省東京入国管理局長(73)に言わせれば、外国人向け「技能実習制度」は、「勉学と就労を峻別しない日本版奴隷制度」であり、廃止すべきシロモノである。 だが、いま審議中の入管法改正案は、古い制度を残したまま新しいしくみをつくるという内容。
「移民」(永住者)を受け入れよーーと坂中は言うが、政府は、期限付きで帰る「外国人労働者」しか入れぬと言い張る。
それでも坂中は政府案を評価するという。

人手不足の日本は、海外から単純労働者を受け入れるしくみがなく、そのしわ寄せが技能実習生と留学生へ向かっている。
技能実習生の場合、実習の名の下に低賃金の単純労働を強いられ、賃金不払い、暴行、脅迫などの事例が後を絶たない。
一昨年、監視強化の制度改正がなされ、統計上は不正行為が減った。
途上国支援というタテマエで始まった研修制度が外国人を安く雇うための隠れミノになってしまった。
それなら廃止すればいいのに、政府はそういう決断はしない。やめれば混乱するからーー。最新の入管統計によれば、ベトナム、ネパール、中国などから来た29万人の技能実習生が製造業、農業、建設業などの現場で働いている。

野党は政府の対応を批判し、一部を除き、入管法改正案に反対した。が、野党より厳しい批判を秘める坂中は政府の取り組みを評価する。なぜかーー。
「移民政策に取り組む議論の第一歩を今国会で踏み出し、千年来のタブーを解いたから」(坂中)
坂中の言う「移民」とは永住許可を受けた外国人のこと。米国の移民法でいえばグリーンカード(永住許可証)取得者。労働力として使い捨てられるのではなく、社会的諸権利を保障される存在である。
坂中によれば、人口減少と少子高齢化、地域コミュニティー崩壊の危機に直面する日本は、優秀な外国人を進んで迎え、その力を取り込んで新たな国づくりに挑むべきである。
<移民大国>アメリカで逆流が始まり、移民恐怖症が世界中に広がる今、日本が<移民鎖国>から<移民開国>へ転換することには世界史的意義がある--と坂中は意気込む。

坂中は1970年法務省入省。福岡、名古屋、東京の入管局長を歴任し、この間、ブラジルやペルーなどから多くの日系人が来る契機となった90年在留資格再編など、節目の入管法改正を自ら手がけた。
東京の歓楽街に巣くう中国人犯罪組織との対決、フィリピンパブの人身売買事件摘発など、外国人犯罪と向き合った体験は「入管戦記」(坂中、2005年、講談社)に詳しい。
これまでに「日本型移民国家への道」(11年、東信堂)など20冊以上の移民本を出版。「売国」批判にもさらされてきたが、坂中は好ましくない外国人の排除も論じており、お人よしの開国論ではない。
05年退官し、移民政策研究所を創設。新刊「日本の移民国家ビジョン」(同研究所)にこう書いた。「日本社会には寛容でおおらかな伝統があり、共生社会を築く素地がある」
そうだとしても道のりは険しい。外国人を隣人に持つなど想像できぬ日本人が大半だが、誰もが意識せねばならぬ時代が来たということだろう。