歴史は日本型移民国家に舵を切った

坂中提案

法務省時代・移民政策研究所時代の45年間、日本人の誰も手を付けようとしなかった移民政策の立案に力の限りを尽くした。孤高を持する道をまっすぐ進んだ結果、望外の成果を得た。移民政策研究の世界的権威が、「新鮮で創造性の豊かなもの」と評価する移民国家理論の完成である。未踏の原野を開拓者魂で突き進めば大きな目標を達成できるという典型だ。

現在は、移民政策研究所の所長の立場から、世界の若人に夢を与える移民国家の樹立を政府と国民に迫っている。移民国家ニッポンが日本文化にあこがれる世界の若者の夢をかき立て、世界のえり抜きの人材が日本に殺到する時代を視野に入れている。

もっとも、私が著作・論文の形で発表した日本型移民政策の提言は、長年、国民の関心を呼ぶことはなかった。日本の歴史はじまって以来の革命的な移民政策を提唱しているのだから、国民の理解を得るのが容易でないことは承知している。

その一方で、私の政策提言に対して違和感を覚えた日本人は多数いると想像するが、理論的反対論も感情的反発もほとんど見られない。各方面から袋だたきにあうと覚悟していたが、さいわいそういう目にあわずにすみそうだ。ヘイトスピーチ団体など移民反対派の活動も、国民の反発を買い、終息の日が近いと見ている。国民的規模での移民反対運動が起きることもないだろう。

以下は2016年3月現在の移民政策に関する情勢分析である。昨年中に起きた移民政策を強力におしすすめる数々の動きから判断すると、移民国家議論の帰趨が明らかになったといえる。たとえば、国民の51%が移民の受け入れに賛成の朝日新聞の世論調査。20代の若者の50%が移民の受け入れに賛成の読売新聞の世論調査。移民開放を国に求める榊原定征経団連会長の画期的発言。消滅の危機にある地方事情に詳しい石破茂地方創生相の移民政策推進発言。そして、安倍晋三内閣が打ち出した未来構想・「一億総活躍社会プラン」など。

安倍政権が50年後の1億の人口の確保を国家目標に掲げたので、「移民50年間1000万人の受け入れで1億の人口を維持する」という坂中構想について国民的コンセンサスが成立する日は近いと予想する。なぜなら、人口の自然減が猛烈な勢いで進行する日本の将来推計人口に照らして考えると、50年後の一億総活躍社会とは、1000万の移民を含む、1億の国民が総活躍する社会にほかならないからだ。

ここまで筆を走らせている最中ビッグニュースが飛び込んできた。自民党は2016年3月、「労働力の確保に関する特命委員会」(委員長・木村義雄参議院議員)を立ち上げ、移民に関する議論を始めるという(2016年3月3日のロイター通信)。

歴史は日本型移民国家に舵を切った。長いトンネルを抜け、ミスターイミグレーションの時代の足音が聞こえる。先のことはわからないが、何はさておき順風に帆をあげて新しい時代をつくる第一歩をふみ出すとしよう。

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