東アジア共同体よりも太平洋共同体にひきつけられる

坂中提案

私は1977年に公表した論文「今後の出入国管理行政のあり方について」において「東アジア共同体」構想を展開した。

〈文明史的な視野から「世界の中の日本」のあり方を展望するとき、我が国としては、いかなる困難がその前途に横たわっていようとも、アジアの一員として、特に民族的・文化的・歴史的に密接なかかわり合いがあって相互に共通の基盤がある中国・朝鮮とともに生きていくという基本姿勢を確立し、長い時間をかけて幾多の困難な問題を克服し、最終的にはこれらの国との運命共同体ともいうべき関係(東アジア共同体)の樹立をめざす以外に生存の道はないと考えられる。〉

それから37年が経った今の私は、東アジア共同体よりも太平洋共同体にひきつけられる。以下はその理由である。

アジア共同体構想については、アジア地域はヨーロッパとは事情が異なると考えている。そもそもアジアという実体があるのかも疑問である。ヨーロッパでEUが成立したのは、キリスト教という共通の精神的基盤があったからだ。しかし、アジアでは、宗教一つとってみても、仏教、イスラム教、ヒンズー教、キリスト教など多様である。日本人は仏教と神道を中心に八百よろずの神がみを信仰している。中国の支配民族の漢民族のように宗教を否定する民族も存在する。

東南アジアとかASEANとかいわれるが、そこに住む人びとの間に一体感はあるのだろうか。
各国の国民に運命共同体を作る覚悟はあるのだろうか。国の成り立ちや歴史認識が大きく異なる日本、中国、韓国の三国が東北アジア共同体をはたしてつくれるのか。人口大国インドはアジアなのか。インド人にアジアへの帰属意識はあるのか。以上のことなどを含めて考えると、アジアの地域統合の可能性について懐疑的にならざるを得ない。

一方、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加が予定されている国々を見ると、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと、世界を代表する移民国家が名を連ねている。日本がTPPに参加し、これから50年かけて移民1000万人を入れる「移民大国」への道を歩めば、移民立国の価値観を共有する主要国が環太平洋地域に集結する壮観な世界が出現する。それにとどまらない。加盟国の間で人の移動が激しくなり、太平洋共同体を作る気運が高まるだろう。

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