未完の人生にひかれる

坂中提案

私の使命は移民国家理論の完成で終わらない。移民国家の建国という大業が残っている。国家百年の偉業を余すところなく達成すれば坂中移民国家論は有終の美を飾れるが、国事に奔走する私にとって自分の夢がかなうかどうかはどうでもいいことだ。それに何もかもうまくゆく人生は私の性に合わない。

20代の時分から、いい事ずくめの人生などこの世に存在しないという人生観を抱いていた。70代の今も、いいこともあれば悪いこともあるのが人生だと思っている。理路整然とした論文のような人生などあり得ない。仮にあったとしても、そんな計算ずくの人生は心の葛藤も人間味もハプニングもない。およそおもしろみに欠ける人生ではないか。

人が一生の間に達成できることは極めて限られていると考えている。私はやり残したことがいっぱいある人生にひかれる。それは大きな夢を持って生きてきた何よりのあかしである。公務員生活においては有言実行をモットーに生きてきたが、人類未踏の移民国家の創造については未完成交響曲で終わる運命にあると達観している。

移民革命思想の確立という命がいくらあっても足りない危険なことに手を出した以上、いつも万感の思いをこめて遺言のつもりで著作物を書いてきた。論文を書き終えると、言っておきたいことをすべて吐き出したのでいつ死んでもいいという強迫観念にとらわれた。そのような精神的葛藤を繰り返して、日本型移民国家の指針となる理論体系の完成にこぎつけた。移民国家への道の八合目までの仕事を成し遂げたと思っている。ここまでやれば十分である。世界に冠たる移民国家をつくることは100年後の地球時代に生きる日本人の手にゆだねる。

 

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