1. TOP
  2. 政策提言
  3. 最晩年をどう生きるか

最晩年をどう生きるか

移民政策関係の著作物を積み上げた実績が物を言って、私は時の人になるかもしれない。移民国家の生みの親になるかもしれない。だが、業績が絶賛される時代は、私にとって人物評価が百八十度ほど転換する危険な世界だ。大業を成し遂げた人間の最晩年がみにくいものであることは、多くの歴史書が語るとおりである。

いまの私は、これから何をなすかではなく、どのように生きれば潔く最期を迎えられかに関心がある。坂中論文の著者の名を汚すことがないよう筋を通すこと、論文が書けなくなったときに移民政策研究所の看板を下ろすこと、これが今の私が考えている引退のシナリオである。

1975年にまぐれ当たりの満塁ホームランのような「坂中論文」を書いた時から今日まで名誉も悪名も嫌というほどいただいた。その重みを背負って苦難の道を歩んできた。もうほっておいてほしいというのが今の正直な気持ちである。

独創的な論文で始まり独創的な論文で終わる人生を全うした。日本の未来を切り開く天職に従事するという類まれな人生を経験させてもらった。これ以上のものを求めたら神様の罰が当たる。