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最新作『坂中英徳・在日朝鮮人政策を語る』

2000年代初頭、朝日新聞の記者から、「伝説の坂中論文を書いた人はまだ生きておられるのですね」と驚きの眼で見られた。30歳の時に歴史を画する論文を書いたからそのような言葉が飛び出したのだろう。

幸運にも在日朝鮮人政策の論客は2019年まで生きた。74歳になった今も老骨にむち打ち、移民政策論文をたゆまず書いている。筆の勢いは衰えを知らない。
 
一つの論文が一人の国家公務員の一生を決めた。1975年に書いた坂中論文を原点に移民政策研究をきわめる道を歩んだ。タブー視して誰も近づかない原野を独りで開拓した。渾身の力を込めた論文の数々は知識人からも政治家からも完全に無視された。千年来続く移民鎖国のイデオロギーを打ち破るため悪戦苦闘を強いられた。そのいっぽうで七転び八起きの論文人生は真にエキサイティングなものであったと述懐する。

「移民1000万人構想」と「人類共同体ビジョン」の旗の下に日本を移民社会の理想郷へ導く使命を全うした。一本一本の論文に精神をそそぎこみ、30冊余の移民政策論文を公にした。長年の努力が実って世界最高水準の移民国家理論が完成した。

いま現在は、坂中移民革命思想に共鳴する人は皆無に等しい。しかし、22世紀の移民黄金時代には坂中ビジョンに共鳴する人が続出するであろう。

今日では、『今後の出入国管理行政のあり方について』(坂中論文)を実際に読んだ人はほとんどいないと思われる。今では「幻の論文」なのだろう。

坂中論文を書く機会に恵まれなかったとすれば坂中英徳はどうなっていたのだろうか?おそらく移民政策研究の先駆者の私はなかった。生前に「ミスター入管」「反骨の官僚」「救世主」「革命家」「ミスターイミグレーション」というような形容詞をつけられることもなかった。世界の主要国で反移民・人種差別を唱える勢力が勢いを増す中、人類共同体世界の理念を掲げて立ち上がることもなかった。

「坂中論文」と「在日朝鮮人政策」と「移民政策」は密接不可分の関係にある。坂中論文に基づき在日韓国・朝鮮人問題を円満解決に導いた経験を鏡とすれば、日本型移民政策は画期的な成果をおさめると自信を持って言える。

現在の私は、坂中論文を書いたことを生涯の誇りとしている。移民人生を全うする決意を新たにしている。

最新作の『坂中英徳・在日朝鮮人政策を語る』は、在日朝鮮人問題に関係する論文を編纂したものである。44年間在日朝鮮人問題と死闘を演じた坂中英徳の回想記である。1970年代に在日朝鮮人社会から猛反発を受けて辛酸をなめたが、現在も健筆を振るう坂中論文の著者の手になる在日朝鮮人政策史がここに完成した。起承転結のなった論文人生を語り尽くして晴れ晴れした気分である。

日本の最大のタブーに挑んだ坂中論文は永遠に光輝を放っているかもしれない。