日本語と移民

坂中提案

日本型移民政策を実行に移す場合の課題は日本語教育体制の整備である。日本の小学校、中学校は日本語のできない子供を教えた経験が浅いため、日本に居住する外国人を教育する体制になっていない。

政府は、外国人は義務教育の対象外というが、国籍に関係なくすべての児童に教育を受ける権利を保障した「児童の権利に関する条約」(平成6年条約第2号)を持ち出すまでもなく、そのような考えはまちがっている。小学校・中学校が、日本語のできない在日外国人の子供を受け入れ、十分教育する体制を一刻も早く整えるべきだ。

同時に、旧態依然の日本語教育のあり方を根本的に見直す。外国人が短期間で日本語会話能力を習得できる日本語教育法の研究開発や、パソコンを使った漢字習得法の技術開発など、来るべき移民時代をにらんだ日本語教育法の改革をお願いする。

世界の若者が日本語に親しみを感じ、日本語を楽しく学んでもらえるようにすることも必要である。特に、非漢字圏の国々の外国人に対する日本語教育法の研究開発に力を入れてほしい。たとえば、国が外国人が覚える必要がある漢字を「外国人常用漢字一覧(1000字程度)」として公示してはどうか。

日本語教育学の専門家には発想の転換が求められる。日本語は日本人の独占物ではなく、世界の多くの人々が学ぶ言葉に発展する移民時代を視野に入れて、学ぶ側の立場に配慮した日本語教育改革を進めてほしい。

在日外国人の子供たちが日本の学校で勉強し、日本語の読み書きに熟達すれば、学校の授業が理解できる。進学の道が開ける。希望する職を得ることができる。

成人後は、日本人とのコミュニケーションもスムーズにいくし、社会統合も進む。日本語には日本人の考え方や生き方など日本文化のすべてが含まれているので、日本語を習得した外国人は日本人といい関係をつくり、日本社会への適応も早い。

日本人と移民が共生する社会をつくるためにも、移民に対する日本語教育が重要である。日本語のできる外国人となら、日本人はすぐにうちとけ親しくなる。日本語をマスターした外国人は、日本的思考や日本的美意識をある程度理解できるようになる。さらに努力すれば、日本の知識人と五分の議論ができるようになるであろう。あるいは、日本人の行動美学に共鳴する外国人、心は日本人よりも日本人の外国人が現れるかもしれない。

移民が日本社会の多方面で活躍するためにも、日本の土地になじんで幸せに暮らすためにも、日本語が話せるだけではなく、一定の読み書き能力が不可欠である。

世界各国の人々が使う「にほんご」の視点から、異なる民族間のコミュニケーション手段としての日本語のあり方を真剣に考える必要がある。日本型移民政策の大黒柱である日本語教育制度の充実・強化は待ったなしだ。たとえば、経済連携協定による看護師、介護福祉士の受け入れで明らかになったように、移民受け入れの成功の鍵は日本語能力にある。農業、工業など就労分野が変っても移民政策における日本語のもつ重要性は変わらない。

日本語教育はボランティア任せではいけない。外国人に速く正確に日本語を教える専門性が求められる。国語教育の延長では太刀打ちできない。それはプロの日本語教師の仕事である。

国に提案がある。日本語教育の水準を高め、日本語教師の社会的地位の向上を図るため、日本語教員免許証制度を創設してもらいたい。世界各国から多数の移民を迎える大量移民時代に入ると、プロの日本語教師が引っ張りだこになる。ふくれ上がる需要に即こたえられる日本語教師の養成は急務だ。

移民政策の成否は、外国人が日本の高等職業専門学校や大学に合格できる日本語レべルに達するよう、入国前と入国後に、日本語をみっちり教えるかどうかで決まる。そのためには、外国人に短期間でかつ正確に日本語の基本体系を教える日本語教育法の研究開発を急ぐ必要がある。なかんずく入国前に、現地の日本語教師が現地のことばで、日本語の基礎知識を教える「日本語教育センター」を主要移民送り出し国に設置してほしい。

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