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日本的感性から生まれた人類共同体思想

 人類共同体思想は日本的感性から生まれたものである。日本と精神風土が異なる西洋人の頭からは出てこないアイディアである。

 移民先発国の移民処遇の歴史を概観すると、決して道理にかなったものとは言えない。人種差別意識とイスラム教徒に対する恐怖心が国民の心に刻まれている欧米諸国においては移民の同化も社会統合もあまり進んでいないようだ。それどころか2020年代初頭の現在、反移民を主張する極右政党の台頭が見られる。高度文明を誇る欧米社会で起きている移民排斥と人種差別の根深さに驚く。

 私は既存の移民国家の轍を踏んではならないと肝に銘じ、日本独自の移民国家の理念を打ち立てた。「万人は平等」と「人類は一つ」という日本精神を移民国家の理念に体現し、人類のすべてが平和の心で結ばれる人類共同体社会の実現を究極の目標にすえる。

 人種・宗教を問わずすべての人類に開かれた日本型移民国家ビジョンは、白人至上主義とキリスト教という一神教の考えが根底にある西洋精神の対極にあるものだ。人間・動物・植物のすべてに神の存在を認める日本人の汎神論的世界観がその根本にある。日本では神道と仏教が平和共存(神仏習合)している。日本人の心の奥には文明社会では極めてユニークな仏心すなわち自然界に存在するあらゆるものに憐みの心を寄せるアニミズム(精霊信仰)の世界が広がっている。動植物の仏心を描いた江戸時代の画家・伊藤若冲の絵をこよなく愛する民族である。

 人種・民族・宗教に対する偏見が西洋人と比較して非常に少ない日本人は、世界の諸民族の誰よりも早く人類共同体社会をつくる可能性を秘めた民族である。様々な民族の心を一つにする同化力の強い日本社会の特色とあいまって、日本人が22世紀の移民政策に新風を吹き込み、日本が世界のモデル国としてそびえるのも夢ではないと考えている。