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日本型移民政策の理念

総じていえば、今の日本の若者は将来への不安をいだいているせいか元気はつらつとしたところがない。留学生として海外に赴く日本人が減少していると聞くが、世界のことに関心を持つ若者が少なくなり、国内にひきこもる若者が多くなったと感じる。人口減少時代の日本は内向きで縮み志向の国になるのだろうか。

日本は未体験の人口減少期に入り、人口危機の重圧が社会全体を覆っている。特に、このままでは負担が重くなる一方の少子化世代(0歳から30歳まで)の未来に暗雲が垂れ込めている。

この、何とも言えぬ閉塞感を吹き飛ばし、若者たちが希望に燃える未来社会をつくるため、責任ある立場の政治家、官僚、経済人、知識人は何をなすべきか。私の答えは決まっている。思い切って世界の人材に門戸を開き、日本のなかに「1000万人の移民」を取り込むというものだ。世界に例のない超少子化と超高齢化の人口問題に「移民立国」で乗り切るのだ。これこそ、日本の未来を担う少子化世代の心を惹きつけるただ一つの国家ビジョンではないか。

移民国家を創造するためには、適正な移民受け入れを推進する「移民政策」が欠かせない。私は、外国人を有能な人材に育て、安定した職場を提供し、永住者として受け入れる「日本型移民政策」を提案している。「日本型」の移民政策を名乗るのは、外国人材を「獲る」のではなく「育てる」姿勢を基本に置く、世界に例のない移民政策であるからだ。

未曽有の規模の移民を受け入れるに当たっては国の外国人処遇のあり方も根本的な変革が求められる。社会の少数者である移民の立場に配慮した行政への転換が不可欠である。また、移民として受け入れた外国人の社会へのスムーズな適応を進めるため、日本語教育と就職支援に行政の力点を置かなければならない。さらに、日本国籍の取得を希望する移民に対して簡易に国籍を付与する制度の新設も欠かせない。

1000万人という移民の数については、50年間でそれだけの数の移民を入れても、なお総人口が3000万人減ることに留意すべきだ。私の基本的立場は、人口の自然減に伴って小さな日本へ向かう「縮小社会」に軸足を置いたものである。50年後の日本国民に美しい自然環境と安定した社会を遺すことを国家目標とし、少なくともこの50年間は人口減が続く社会を甘受すべきだと考えている。

1000万人の中には移民の家族も含まれる。欧米の移民国家の経験に照らすと、最初から仕事や永住の目的で入国する移民に加えて、その後に結婚や家族の呼び寄せで入国する移民も相当数に達すると見込まれる。

移民1000万人は一応の目安で、50年かけて今の移民先進国並みの「10人に1人が移民」の移民国家へ移行しようというものである。人口危機が深まる中、現状の外国人受け入れ制度のままでもある程度の在日外国人の増加が見込めるが、それを確固とした移民政策を打ち立てて達成する。受け入れ態勢と移民の社会適応の進捗状況を勘案し、年次受け入れ計画を立て、秩序正しく入れていく。その場合、特定の国籍の人もしくは民族にかたよった移民政策は絶対避けなければならない。今の永住外国人の大半を中国人と韓国人が占めるような移民政策を踏襲すれば国民の猛反発を招く。

世界の多くの国からいろいろな国籍の人をまんべんなく入れる移民政策をとれば、外交上・安全保障上の利益にかなうだけでない。多民族の国民統合を比較的容易に成し遂げられる。

大量の移民の受け入れを円滑に進めるためには世界に開かれた透明で公平な移民受け入れ基準を定める必要がある。たとえば、移民先進国のポイント制(学歴や年齢、語学力などを国の基準にしたがって点数化し、一定の水準に達した外国人に対し、移民としての入国申請の資格を与えるというもの。移民受け入れ国に貢献する人材であるかどうかを総合的に判断できるとされ、イギリスやカナダなどで導入されている。)を参考に、語学能力、学歴、職歴、社会への適応能力など具体的な審査項目を定め公表してはどうか。