1. TOP
  2. 政策提言
  3. 日本人は異なる民族と共生する社会を造れるか

日本人は異なる民族と共生する社会を造れるか

2018年10月の国会において移民政策論議が始まり、安倍晋三首相が国会で「共生社会の実現」という言葉を口にするようになった。日本の歴史を画する首相発言と評価するにやぶさかでない。しかし、「口に言うのは易いが実行は難い」と言わざるを得ない。
民族は千年単位の時間をかけて歴史的に形成されたものである。異なる民族間の共生は並大抵の努力で達成できるものではない。
 
特にわたしたち日本人は、1000年以上も日本列島の中でいわば気心の知れた者だけで社会を形成し、おおむね平和に暮らしてきた歴史がある。異なる民族と親密な人間関係を結ぶための心の準備はまだできていない。国民の多数が外国出身者との交際法を身につけているとは言い難い。顔かたちや皮膚の色の違う外国人や、ものの考え方や価値観が異なる外国人と隣近所で共に生活するという姿勢も、外国人と上手に付き合うためのノウハウも持ち合わせているとは言えない。先祖代々の日本人は異邦人との交際法を努力して会得する必要がある。
 
その場合、縄文・弥生の時代から日本列島で生活してきた日本人は、自らの民族的アイデンティティを確認するとともに、アジアの諸民族、白人、黒人その他すべての民族を自分たちと対等の存在と認める。移民の末裔である古参の日本人が新参の移民と良好な関係を築くには、日本列島に渡来してきた時期は異なるが同じ渡来人(移民)であると胸に刻み、移民としての同胞意識を抱いて温かく迎える姿勢が何よりも求められる。

以上に述べた意識改革を通して育まれた国民の健全な外国人観に基づき、地方自治体が大胆な制度改革を行なうことが肝要だ。その場合、家庭、学校、職場、地域社会、さらには国レベルにおいて、日本人と移民がお互いの立場を尊重し合って生きる社会、思いやりの心で移民と正しく向き合う社会の形成を目標に掲げ、政府が音頭をとって啓発運動を展開してほしい。

国民の大きな期待を背負って発足した出入国在留管理庁をはじめとする政府機関には、移民に対する見方、処遇の基本的なあり方についての意識改革が求められる。外国人を専ら管理・規制の対象ととらえる従来の発想のままでは「日本人と移民が共生する社会」の実現ははかない夢で終わる。移民を将来の国民と正当に位置づけ、移民の権利を日本人と同等に認める基本的立場に立って、日本人と移民が仲むつまじく生きる移民社会を造ってもらいたい。