日本の移民政策が米国の移民政策の退場を迫る日

坂中提案

2016年という年は、トランプ米大統領の登場に端を発し、移民問題の世界的混迷が深まり、世界が激動の時代に入った年として世界史に刻まれるであろう。そして、これから新しい世界秩序の形成に向けた動きが各方面から出てくるだろう。その場合、もう一つの文明の旗頭である日本が、新世界秩序をつくる重責を果たす必要があると私は考えている。

アメリカは移民の国で「人種のるつぼ」と言われてきたが、人種間の融合どころか、白人至上主義団体と黒人至上主義団体の対立・抗争が激しくなる一方だ。トランプ米大統領の人種差別的発言の数々が、アメリカ社会の人種差別の根深さを浮き彫りにした。

西欧文明は結局のところ、白人至上主義者と、キリスト教という一神教を信仰する人たちがつくった偏見ありありの文明なのである。自分たちの信じる宗教が絶対で正しい。ほかの宗教はすべて邪教である。そういう独善的な考えが西洋人の根本にある。これまでは経済力と軍事力で圧倒的な力があり、移民の受け入れにも比較的寛容であった。ところが、経済が行き詰まり、軍事面でも絶対的パワーがなくなり、白人ファーストの西洋人の本性が現れたのである。常道に外れた反移民政策をとるトランプ米大統領は西洋社会の差別体質を体現する象徴的な人物である。

世界各地で人種対立と宗教対立が激しくなるなか、それでは日本文明は人種・宗教を理由に迫害されている人々のために何ができるのだろうか。

そもそも日本人の民族性は、人種・宗教の違いはたいしたことではないと考えるものである。われわれ日本人は八百万の神々を信仰し、日本では神道と仏教が共存している。日本人は自然との一体感を抱き、動植物にも仏心があると考える。これは私の仮説であるが、そのような宗教観を持つ日本人には、キリスト教やイスラム教の伝播に対する抵抗力が備わっているのではないか。また、白人と黒人との間に優劣はないと考えるのが日本人。

さて、私が立てた移民政策には、「人類は同類で一つ」という普遍的思考が原点にあり、さらに和を尊ぶ日本精神を触媒として加えて成立した人類共同体の世界観が組み込まれている。その点が白人優位の考えが根底にある欧米諸国の移民政策とは決定的に異なるところである。

日本が人類共同体哲学を基本理念とする日本型移民政策の旗を掲げて世界の人々にアピールすれば、西洋人至上主義が精神の根本にある欧米の移民政策に対する有力な対抗軸になると考えている。

歴史をさかのぼると、西洋と日本では移民に対するスタンスが正反対のものであったことが明らかになる。

西欧における移民の歴史は、アフリカの黒人を奴隷として新大陸に強制的に移住させた原罪を背負っている。これは世界人権史に残る汚点である。そして、現在の欧米諸国はアフリカ系の人たちを含む移民の力を借りなければ経済と社会が成り立たない状況にある。

明治以後、日本が模範としてきたヨーロッパ文明、アメリカ文明とはいったい何だったのか。移民政策に限定して言えば、人の道と正義に著しく反するものであった。それに対して、ひろびろとした心がある日本人の典型である移民政策研究所所長が提唱する移民政策は、人道主義を旨とし、移民を人類同胞として地球市民として迎え入れるものである。

「全人類はみな同じ人間である。宗教や文化、皮膚の色の違いに関係なく、世界の人々を平等に受け入れる。日本人の心のこもった思いやりの精神で移民を歓迎する」と、日本政府が国際社会に約束してはどうか。東洋の島国に誕生するニューフェースの移民国家が普遍的な移民政策の理念を前面に出して世界に打って出れば、それは異なる宗教に対する偏見と白人第一主義の考えが基本にある欧米の移民政策の退場を迫るものになろう。もしかすると、そのことが契機となって西洋文明の時代から日本文明の時代へと世界の思想界の潮流に変化が起きる可能性がある。

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