1. TOP
  2. 政策提言
  3. 日本の移民国家ビジョンが世界文明の新地平を開く

日本の移民国家ビジョンが世界文明の新地平を開く

2020年6月現在の移民・難民をめぐる世界情勢を概観すると、実は、コロナウイルスが世界中に蔓延する前から、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアなどの諸国で異なる人  種と宗教に対する排他的な考えが勢いを増していた。移民拒絶主義者・人種差別主義者・極右団体がわが物顔で闊歩する世界が出現していた。

しかし、世界中が国境管理、移民受け入れ問題で大混乱に陥っている中、移民鎖国のイデオロギーを墨守して惰眠をむさぼっている日本のあり方こそよほど大きな問題である。移民問題で悪戦苦闘する先進国の中でひとり日本が移民鎖国の温室の中でぬくぬく生きる時代は終わった。一刻の猶予も許されない。ここ最近は、自分の力不足のせいで日本文明を再起不能の事態を招いた責任の重さを痛感する日々が続いている。

少子高齢化による人口秩序の崩壊の脅威がひたひた押し寄せてくるなか、コロナウイルス問題が起きる直前まで、地方自治体の市長や村長が先頭に立って外国人材の獲得に駆けずり回っていた。超少子化の進行で人材確保が死活問題と認識する経済界は新卒の大学生・高校生の囲い込みに奔走していた。高度経済成長期の「青田刈り」を彷彿する動きも一部に見られた。

コロナウイルス問題が終息を迎えた後において、引き続き政府が移民鎖国に固執すれば、人がいなくなった地方自治体の消滅や、人材が獲得できなくなった中小・零細企業の倒産が相次ぐ。政治家は移民の助けを求める国民の悲鳴に耳を傾けるべきだ。政府は外国人材を各方面に潤沢に供給するため早急に移民開国を決断すべきだ。国民は「社会の一員として移民を温かく迎える社会」をつくる覚悟を決めるべきだ。

出生者人口の激減で大量の移民を最も必要とする日本が、50年間で1000万人の移民(難民を含む)を受け入れると、世界の人々に約束する時がきた。移民希望者が人道危機に見舞われている中、世界中の人が「人種や宗教の違い乗り越えて人類が一つになる移民社会の理念」(人類共同体思想)を掲げて立ち上がる人道移民大国の出現に歓呼の声をあげるに違いない。

移民受難時代の到来は私の身にも変化をもたらした。日本の移民国家ビジョンのキーワード――すなわち人類共同体思想は人類史的・世界的意義を有すると、世界の識者の注目するところになった。世界の知識人の間でミスターイミグレーションの名が通っている私は今後、日本のみならず世界の移民政策を牽引する責任があると気持ちを引き締めている。

私の移民政策理論の発展を温かく見守ってくれた内外の友人たちは、人類共同体社会の創造と世界平和体制の確立を根本理念と位置づける移民国家の新理論を、坂中移民政策論の到達点と評価する。坂中セオリーの飛躍と発展を象徴する英語版論文集が『Japan as an Immigration Nation』である。

和を尊ぶ日本精神が根底にある革命的な移民国家理論が世界文明の新地平をひらく夢を持ち続ける。遅くとも22世紀中には、平和の心をはぐくむ日本の精神土壌で成長した人類共同体思想が、人類の歴史に新しいページを開き、移民時代に生きる地球市民の心をとりこにし、世界の人々を和解に導く星として煌めく時代が訪れるであろう。