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日本のジャーナリズムの再生はあるのか

  日本の移民政策は、世界の評価と日本の評価の落差が大きい。ワシントン・ポスト、ニューヨークタイムズ、ロイター通信、エコノミスト誌など世界の有力メディアは坂中移民政策理論の独創性と普遍性を評価する。「ミスターイミグレーション」と私を立ててくれる。そしてこのたび米国の出版社から英語版論文集『Japan as an Immigration Nation』が出た。世界の知性が坂中ビジョンの持つ世界的意義を認めたのである。

  一方、総じて日本のメディアは移民政策に無関心である。移民問題と専門に取り組む記者も見当たらない。この10年間、坂中移民国家ビジョンは取材の対象にならない。それをいいことに私は、移民政策と入管法に不案内の日本人ジャーナリストの取材をすべて断っている。

  私が取材に協力した世界のジャーナリストたちは、日本が直面する人口問題の重大性と、その有力な解決策としての移民政策を評価し、坂中移民国家構想を繰り返し報道する。もとより私の英語版の著作を熟読している。

  他方、移民政策に関する専門知識に欠ける日本のジャーナリズムは、日本の最優先の国民的課題である移民政策のあり方について的を射る報道ができない。それとどまらない。ネット世界において若者の間で移民政策論議が盛り上がっているというのに、時代の動きが読めない全国紙やNHKはいまだに「移民」という言葉も「移民政策」という言葉もその使用をためらっている体たらくだ。そればかりか、全国紙は「単純労働」というグロテスクな差別用語を使って反移民の世論形成に一役買っている。移民政策に消極的なNHKは日本版奴隷制度=技能実習制度を持ち上げている。NHKは悪徳雇用主と奴隷労働者との共生が成立するとでも考えているのか。公共放送としてあるまじき態度と言わなければならない。

  国民世論を正しい方向に導く見識もジャーナリスト魂もない日本のジャーナリズムの再生はあるのか。断じて否である。政府の御用新聞と、政府の考えを垂れ流すテレビが主流になると予想する。

  インターネットの時代、日本のジャーナリズムが生き残る可能性は薄いと見ている。いっぽうで日本の主要メディアが反移民の立場をとることはないと考えている。排外主義や移民拒否のスタンスをとることは良識派の国民の反発を招くばかりか、日本の移民開国を待望する世界の世論を敵に回し、日本のジャーナリズムの死を早めることになるからだ。

  日本の報道機関が来るべき移民開国の歴史的瞬間をとらえる見識がなく、「移民政策はとらない」という立場をかたくなに守る政府の顔色をうかがう姿勢のままだと、移民国家への歴史的転換は、坂中英徳移民政策研究所所長の大車輪の活躍によって国民的議論なしで実現することになろう。私が移民政策研究所のホームページに投稿したエッセイや坂中英徳の英文著作を読んで移民政策に共鳴した若い世代が決起する形で移民国家・日本が生まれるべくして生まれると考えている。いかに頑迷固陋の政治家といえども日本の未来を担う若者たちの声には真剣に耳を傾けざるを得ないからだ。

  それはさておき私は、千年に一度の移民革命は国民の圧倒的多数の支持に基づく「国民革命」として成就することを念願している。移民受け入れに賛成の国民的コンセンサスを形成し、移民国家へ自然体で平和的に移行するというものである。しかし、主要メディアの協力が得られなければ私の願いはかなわない。特に活字メディアの奮起を促す。思い切った紙面の刷新をお願いする。日本列島の全域から移民の助けを求める国民の悲鳴で紙面を埋め尽くしてほしい。NHKは地域住民の激減で村落が続々消滅している地方の惨状を繰り返し報道すべきだ。

  コロナウイルスの問題で歴史的な転換期に入った日本は、移民政策をめぐる状況にも歴史的な変化が起きようとしている。2019年4月、超小子化・超高齢化問題を最大の政治課題と位置づける政府は、法務省の外局として出入国在留管理庁を設置するとともに在留資格(外国人の受け入れ範囲)を大幅に拡大するなど移民立国に向けて着々と布石を打っている。内閣総理大臣が「外国人との共生社会」を語る時代がやってきた。