日中関係の未来像

坂中提案

私は2007年11月24日、中国の清華大学において「人口減の日本は『世界の若者が移住したいと憧れる国』を目指す」と題して話をした。清華大学の学生が対象の講演会が午後2時から6時まで、引き続き清華大学の学者、研究者との討論会が10時まで、話は夕食をはさんで8時間に及んだ。未来志向で日中関係の展望が開ける講演会・討論会になったと思う。

なお、学者、研究者の大半は日本での留学経験のある親日家の人々であった。

講演の冒頭で「日中関係の未来像」について中国のエリートに語りかけた。以下は、そのさわりの部分である。

2004年の1億2800万人をピークに、日本は人口減少時代に入った。2006年末に発表された日本政府の将来人口推計は、出生率が今の低水準で推移すれば、50年後は4000万人減って9000万人を切り、100年後は現在の三分の一に減少すると推定している。

日本の人口減少は、隣国の中国にとってどのような意味を持つのだろうか。

中国は、人口減の日本に安心感を抱くであろうと考えている。人口が激減する日本は、日本文明の持つ底力によって世界有数の文明国の地位にとどまるが、経済大国から中規模の経済の国に移行するからだ。

日中間には不幸な歴史も一時あった。しかし、安全保障の面でも、人口減で縮小していく日本は人口大国の中国の脅威とはならないはずだ。人口動態の転換に伴い、日本社会全体が平和と安定を志向する「成熟社会」へ大きく変わるからだ。

日本ほど人口減が急激に進み、問題の深刻な国は世界に例を見ない。この問題を考えるに当たっては、モデルとなる国は存在しない。日本が世界の先頭を切って、人口減少時代の国のあるべき姿を検討し、その未来像を示さなければならないと考えている。

中国も、これから少子高齢化が急速に進み、20年以内に人口激減時代を迎える。日本が人口減少問題と取り組んだ経験が、将来の中国にいい先例を開くものになることを願う。

もうひとつ強調しておきたいことがある。人口減少期の日本は、世界各国から相当数の移民を政策的に受け入れる必要がある。その場合、日本が入国を認めた定住外国人には、日本語すなわち漢字の読み書きをしっかり学んでもらわなければならない。様々な民族を日本国民として一つにまとめるには、日本語(漢字)の力を借りる必要があるからだ。

日本語には日本人の考え方も価値観も日本文化もすべて含まれている。外国出身者が日本語を習得すれば自然と日本社会と一体化するだろうと見ている。巨大な中国が有史以来、多くの民族を漢字で束ねてきたのと同じ原理である。

日本人のだれひとりとして漢字を放棄しようとは考えていないから、日本は今後も漢字文化を大切に守っていくと思う。今日の地球上で漢字を国語として使用している民族は、漢字を発明した中国人と、中国人から漢字を学んで平仮名を考案した日本人だけである。

未来の日本と中国の関係を考えるとき、漢字文化を共有していることの持つ意義は大きいと考えている。「漢字」を通して、日本人と中国人は意思疎通を図り、相互理解を深め、友情を育むことができるからだ。

日本と中国は、未来永劫にわたって漢字文化圏の双璧をなす国として平和共存関係を発展させていくにちがいない。

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