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政治家と官僚

移民国家議論が国民の間で活発化しているのに逆らうかのように、政治家の大半が移民政策を政治課題として取り上げることに抵抗している。与野党を問わず政治家は、日本が直面する最大の政治課題である移民開国の是非について国会で議論することを避けている。20代の若者を中心に移民開国を求める意見が強まっているが、若者の心を惹きつける「世界の人材に開かれた日本」を党の綱領に掲げる政党は存在しない。

国家主権の発動そのものである移民政策に政治生命をかける政治家は一人もいない。これまで移民国家百年の計に一家言のある政治家に会ったことがない。移民国家への転換という日本の歴史に輝く仕事にチャレンジする根性の据わった政治家も存在しない。

事は日本の未来を決める重大問題である。政治の世界で活発な議論を戦わせる時が来たというのに、日本の政治家はなぜこれほどまでに移民問題に触れることを嫌うのだろうか。

移民政策に理解のある一部の政治家と議論した感想を言えば、日本の政治家の大半が国粋主義団体による街宣活動を極度に恐れているということである。政治家の多くは極右団体が集票力その他で隠然たる影響力を有していると錯覚しているのではないか。仮に、移民の受け入れのような極右が忌み嫌う政策に首を突っ込むとろくなことはないという考えが政治家の間に蔓延しているとすれば、日本の将来は絶望的と言わなければならない。極右の脅しに屈するような政治家にまっとうな政治が期待できないことは論をまたない。

国民世論が移民賛成に大きく傾いたいまこそ、極右団体からの攻撃に弱いという日本政界の汚名を返上するチャンスだ。日本政治のゆがみを正すためにも、党派を問わずすべての政治家が移民立国で立ち上がり、国会議員が一致団結し、極右勢力の政治への影響力を完全に断ち切ってもらいたい。

次に述べることは、移民国家百年の大計の立案において不幸中の幸いとも言うべきハプニングが起きたという話である。骨のある政治家が不在で国家の大事に及び腰の無責任政治の極みが、国家・国民にとってとてもハッピーな結果をもたらしたという、なんとも不思議な話である。これまで縷々説明してきたように政治家の職責を果たすことを忘却した政治家に代わって、かつて政治家と相対し、「反骨の官僚」で鳴らした移民政策研究のプロフェッショナルがとんとん拍子で筆を進め、世界に類のない移民国家理論の金字塔を打ち立てたという、ちょっと痛快な話である。

どうして一私人にすぎない私が日本の歴史を塗り替えるような大構想を提案することができたのか。「義を見てしないのは勇なきなり」という昔の賢人の教えに従った結果である。民間の移民政策研究所の所長として、国家公務員時代にやり残した仕事に専念する道を選び、「なせば成る」をモットーとする生き方をつらぬいた。

移民政策研究は牛の歩みであったが、継続は力なりだ。一例をあげる。この5年間で約2000本の政策論文をネット上に投稿した効果は絶大で、13年前のオール移民反対から今日の移民賛成派が多数を占めるところまで、国民の移民を見る目が一変した。

法の厳正な執行を旨とする国家公務員を卒業した堅物が「革命家」(ジャパンタイムズ)と命名されたのは予想外の展開であった。ただ冷静に考えてみると、人口危機に陥った日本を救う大任を任せられる日本人は、入管法と入管行政に精通する坂中英徳以外にいなかったということなのだろう。時代の要請と役人時代のキャリアが重なる幸運に恵まれ、移民国家をつくる仕事が移民政策研究所長の手腕に託されたのである。

国家公務員時代を振り返ると、一途な気持ちで移民国家の理想を追い求めてきたが、特別の才能があったわけでも、なみはずれた努力をしたわけでもない。たとえて言えば、誰もがおそれて近づかない問題に食らいつく嗅覚にたけた一匹おおかみが、イノシシのように目標へ向かってまっしぐらに突進したということなのだろう。

そのとき同時に動物的勘が働いた。日本の未来を決める歴史的瞬間とめぐり合った天運に身をゆだねようと決心した。人生には人知の及ばぬ神秘的な出会いがあり、細流が大河の流れに変わる転換点があるのだろう。それと遭遇したのは国家公務員の職を辞した2005年の春のことであった。いま思うと、そのとき私は人生の岐路に立っていたのだが、移民国家の建設に残りの人生をかけることを決めた。そして同年8月、移民政策について研究する民間の研究機関:外国人政策研究所(現在の移民政策研究所の前身)を立ち上げた。そうこうするうちに私は役所の枠には収まらない規格外の移民革命家になっていた。

さて、官僚の末席を汚したことがある私は、官僚組織が移民革命に対する抵抗勢力になると坂中移民国家構想が日の目を見ないことを熟知している。そこで2015年の夏、霞が関の中枢幹部たちと会って、今後の移民政策のすすめ方について腹を割って話をした。彼らは「先輩の日本型移民国家構想に賛成です。それしか日本再生の道はありません」と語った。

そのとき、法務省OBの立てた移民政策が霞が関の高官たちの心をとらえたと思った。彼らはミスター入管時代の実績を考慮して坂中移民国家構想を評価したのだろう。

内閣官房の経済官僚たちが坂中構想を支持する立場を鮮明にした。現役時代、霞が関の異端者で知られた私のまわりに国の将来を憂える官僚たちが集まってきた。人口激減で衰退の一途をたどる日本の将来に対する危機感を私と共有する官僚機構の中から国士が輩出し、私の志を引き継いでくれるだろう。霞が関の憂国の官僚たちが一丸となって支える移民国家ニッポンの将来は心配ないと安堵している。