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明仁天皇のご退位の日に思うこと

2016年8月、英国エコノミスト誌の東京支局長の取材を受けた。取材に対し、英国を筆頭に主要移民国家の移民排斥の動きに危機感を覚えること、今こそ日本政府が人類共同体の理念を掲げ、50年間で1000万人の移民を迎え入れると世界の人々に宣言する時であること、政治家が移民立国に向けて動き出したことなど、日本の移民政策をめぐる最近の動きと、日本型移民政策のエッセンスを説明した。すると、移民政策研究所長が唱える独創的な移民政策を紹介する記事が出た。

『The Economist』(8月20日号、2016年)の「日本への移民――狭き門が開き始めた」と題する記事である。坂中英徳移民政策研究所長の移民1000万人構想と、石破茂衆議院議員の移民政策に関する見解を紹介の上、同誌は以下のように日本における移民政策の動向に言及し、日本の移民政策に関する特集記事を結んだ。

「坂中氏と石破氏は、移民には、日本語と日本の風俗習慣を学び、かつ日本の皇室に敬意を払ってもらう必要があると考えている。いずれにしろ、日本は経済的理由で大量の移民の受け入れが避けられない。日本復興を強調する安倍首相の選択肢もそれしかない」

日本の皇室と日本の移民政策を結びつける発想は日本人にはないものだ。王室を戴く英国人ならではの見方である。日の丸と神社の鳥居のイラスト入りで移民政策と皇室の安寧との一体関係を暗示したこの記事は、海外のみならず国内でも大きな反響を呼んだと聞いている。よく考えると、移民に王室への敬意を表してもらう必要があるという考えは世界の常識にかなうものであったのだ。

『エコノミスト』の移民特集記事は、教育重視の日本スタイルの移民政策の特色と、国籍・人種・民族・宗教の違いに関係なく万人を懐に温かく迎える日本皇室のすばらしさを世界の人びとに紹介し、従来の移民鎖国の日本イメージの歴史的転換を迫るものであった。私はこの記事の意義をそのように理解した。わたし自身も日本の移民国家ビジョンが世界の注目の的になるという身に余る光栄に浴した。

エコノミスト誌の記事に触発された私は、日本の皇室と移民政策の関係について深く考えるようになった。

天皇陛下お誕生日に際しての天皇陛下の記者会見において明仁天皇(現上皇)は、外国人の受け入れについて「各国から我が国に来て仕事をする人々を、社会の一員として私ども皆が温かく迎えることができるよう願っています」と、日本の未来を照らす歴史的な発言をされた。陛下の金言に感銘を受けた私は「外国人を温かく迎える日本社会」をつくる決意を新たにした。

以下は、外国人の受け入れについて深く考えてこられた天皇陛下のお言葉である。移民政策一路の道を歩んだ私は、陛下の真心のこもった言葉に接し、移民社会の将来は光り輝くと思った。天皇陛下のお言葉は千鈞の重みがある。

「今年、我が国から海外への移住が始まって150年を迎えました。この間、多くの日本人は、赴いた地の人々の助けを受けながら努力を重ね、その社会の一員として活躍するようになりました。こうした日系の人たちの努力を思いながら、各国を訪れた際には、できる限り会う機会を持ってきました。そして近年、多くの外国人が我が国で働くようになりました。私どもがフィリピンやベトナムを訪問した際も、将来日本で職業に就くことを目指してその準備に励んでいる人たちと会いました。日系の人たちが各国で助けを受けながら、それぞれの社会の一員として活躍していることに思いを致しつつ、各国から我が国に来て仕事をする人々を、社会の一員として私ども皆が温かく迎えることができるよう願っています。また、外国からの訪問者も年々増えています。この訪問者が我が国を自らの目で見て理解を深め、各国との親善友好関係が進むことを願っています」(「天皇陛下お誕生日に際し」(平成30年12月20日、宮内庁)。