帰国支援金の支給を受けた日系人の再入国を認めるべき

坂中提案

 私は2009年4月、帰国支援金の支給を受けた日系人に対し、再度の入国を認めないこととする入管制度上の措置をとることは憲法上の重大な問題をはらんでいると、日本政府の対応を批判した。それから4年たった今日も、その見解になんら変わりない。

 この制度では、帰国支援金をもらって帰国した日系人が、有効な旅券等を所持し再び入国しようとする場合の上陸審査において、戸籍謄本等の資料により日本人の子孫としての入国目的の正当性を立証しても、その入国が認められないことになる。

 入管法上は、有効な旅券等を所持する外国人が、在留資格に該当し、かつ上陸拒否事由に該当しない限り、義務的に入国を許可することになっている。社会通念に照らし、政府が設けた帰国支援金制度の思恵に浴することが犯罪者などを列挙した上陸拒否事由に当たるとはとうてい考えられない。

 それにもかかわらず、行政運用上の措置として、その入国を認めないとするのは、法律によらずして、特定の外国人(帰国支援金の支給を受けた日系人)に限って、上陸拒否事由に該当しないのに入国を拒否するものであって、一般外国人の入国手続との関係で日本国憲法に定める平等原則に反するのみならず、法治主義の原則にも反する。

 日系ブラジル人をはじめとする日系人は、明治末からのわが国政府の海外移民政策に応じ、南米諸国などに移住し、苦難の道を歩んで今日の地位を築いた人たちと、その子孫である。1990年の入管法改正による日系人に係る在留資格の整備に伴い、約30万人の日系人が定住者として来日し、長年にわって日本経済に貢献してきた。帰国せざるを得ない状況に追い込まれたのは、誰もが予見し得なかった未曾有の経済危機が原因であったことは明白である。日系人自身の責めに帰すべき事由はない。

 国策として大量の移民を海外に送り出したにもかかわらず、ひとたび出国した移民に対し、祖国日本は一貫して冷たい態度で臨んだと言わざるを得ない。ブラジルに移民した人たちはその象徴的存在であり、満蒙開拓団に代表される満州移民もしかりである。国はそのような過ちを二度と繰り返してはならない。

 第二の祖国である日本にUターンしてきた日系人のうち、リーマン・ショックを契機とする世界同時不況で帰国を余儀なくされた人たちについては、帰国支援金の支給を受けた人であるか否かに関係なく、日本の景気が回復し、再入国を希望する場合には、温かく迎える姿勢が日本政府に求められる。

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