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左遷を経験したから今日の坂中英徳がある

フィリピン・パブの問題で政治家から「頑固者の役人」と名指しされるほど法令遵守の立場をつらぬいた結果、1997年4月の人事異動で仙台入国管理局長の辞令を受けた。以後、二度と法務本省で勤務することはなかった。

福岡入国管理局長、名古屋入国管理局長、東京入国管理局長のポストを歴任し、2005年3月、法務省を退職した。

8年間の地方入国管理局長時代、私は何をやっていたのか。じつは引き続き興行入国者の問題の最前線で指揮を執るとともに、執筆活動に力を入れた。その成果物として、次の6冊の本を出版した。

①『出入国管理及び難民認定法逐条解説 新版』(共著、日本加除出版、1997年)

②『在日韓国・朝鮮人政策論の展開』(日本加除出版、1999年)

③『出入国管理及び難民認定法逐条解説 全訂版』(共著、日本加除出版、2000年)

④『日本の外国人政策の構想』(日本加除出版、2001年)

⑤『入管戦記』(講談社、2005年)

①と③は、入管法コメンタールの決定版を目ざした大作である。入管法研究の第一人者が書いた権威ある解説書として司法の世界で今日も活用されている。②は、在日韓国・朝鮮人政策論の集大成の著作である。これ書いて第一のライフワークの在日朝鮮人問題に区切りをつけ、第二のライフワークである移民政策に本格的に取り組む心の準備が整った。以後、移民政策に関する理論的研究に力を入れることになる。④は、「移民」という言葉こそ使っていないが、実質上移民政策論序説と言うべき移民政策の発想につながる論文を集めたものである。

もう一つ、真剣に取り組んだことがある。1997年の夏以降、10年以内に訪れる人口減少社会の移民政策に関する思索に打ち込んだ。その研究成果が、前記⑤の『入管戦記』第9章「2050年のユートピア」と第10章「『小さな日本』と『大きな日本』」である。その本の中で人口減少期に入る日本の移民国家への転換を迫る「移民国家構想」を打ち出した。

顧みると、私の左遷時代は実り豊かなものであった。世界の移民政策をリードする移民政策理論の完成につながる至福の8年であった。

私は決して恥じることのない真っすぐの道を歩んだ。「ミスター入管」並びに「反骨の官僚」という名誉の勲章をもらった。左遷を経験したから今日の坂中英徳があると思っている。