子供から「お母さんはどうして日本人なの」と責められた日本人妻

坂中提案

在日朝鮮人の夫と一緒に北朝鮮に渡った日本人妻は、コリアン帰国者と同じく、北朝鮮当局から「資本主義の害毒を持ち込む者」として監視され、現地住民からは「チョッパリ」「キポ」の呼び名で差別された。また、植民地支配を行った国から来た「敵国人」として、現地住民の恰好の攻撃対象となった。

当局と現地住民による二重の差別に加えて、日本人であることをひた隠して生活しなければならないので、日本人妻は三重の差別を経験した。日本人妻は日本名を名乗ることも日本語を話すことも厳禁され、子供にも日本人であることを告げずに生活していた。それでも母親が日本人であるという理由で自分が社会的差別を受けたこと知り、母親を恨むようになった日本人妻の子供もいた。子供から「お母さんはどうして日本人なの」と責められて自殺した日本人妻は何人もいる。

公式的にはコリアンの帰国者と同じ「敵対階層」に分類されていた日本人妻であったが、実質的には何の地位も身分も保障されていなかった。日本国籍を持つ日本人あるいは外国人としての地位が保障されていたわけではなく、一方的に北朝鮮公民とされ、日本人として生きることは許されなかった。その一方で、日本人であること理由に差別と迫害を受けた。

北朝鮮当局は、日本人妻を「自分から北朝鮮行きを選んだのであり、北朝鮮の公民以外のなにものでもない」と決めつけ、日本国籍を有する日本人妻の出国を認めなかった。日本人妻は「自らの意志で北朝鮮に入国したから北朝鮮公民」という理不尽なやり方で朝鮮人とされ、日本人として生活することも日本に帰ることもいっさい認められず、幽閉状態に置かれたのである。

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