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天下国家を論じる日本人はいないのか

「これからの時勢はもはや決死剽悍の暴勇だけでは間に合わぬ。一人で天下を動かす気概と智恵が必要だ」(司馬遼太郎『竜馬がゆく』)。1864年に起きた蛤御門の変のあと坂本龍馬が同志に語った言葉とされる。

鎖国か開国かで国論が沸騰した幕末から明治にかけては天下国家のことを考える英雄豪傑が活躍した。坂本龍馬以外にも、海外事情に明るい勝海舟がいた。開国を決断した井伊直弼がいた。黒船で米国への密出国を企てた吉田松陰がいた。江戸城の無血開城を決断した西郷隆盛がいた。

古今東西の歴史書が雄弁に語るように、国家存亡の危機の時代には逸材が輩出するものである。どうしてこういうことになったのかわからないが、国家制度の全面崩壊が迫る当世には、政治家の間で移民鎖国か移民開国かの激論が闘わされることもない。明治維新の時のように天下国家を論じる日本人もいない。理不尽な移民鎖国体制の打破に政治生命をかける政治家もいない。

1億2800万人の国民は空前絶後の国家的危機に打つ手がないと白旗を掲げて降参してしまったのか。ここに「ギブアップしてはならない。智恵を絞れば打つ手は必ずある」と主張する日本人がいる。移民国家をつくるという天下国家の問題と一貫して取り組んできた稀代の革命家である。

国家存亡の秋に沈黙を決め込む政治家・官僚・知識人が大半の当代にひとり私は、「人口崩壊には移民革命で」と、国民に決起を呼びかけている。四面楚歌の状況下での孤高の闘いが続く移民政策研究所所長には「一人で天下を動かす気概と智恵」が求められるのだろう。

そのことは重々承知している。だが、私に国を動かす器量も実力もないことも痛いほどわかっている。今の私は移民政策に賛成の国民を増やすことしか頭にない民間人である。昔とった杵柄で入管法と移民政策の各般に精通していることが取り柄の元国家公務員が、移民国家の立国についての国民的コンセンサスを形成できるのだろうか。移民政策研究所所長の肩書きと移民政策研究の第一人者という看板がどこまで世間に通用するのだろうか。

だが、私がやらなくて誰がやるのかという責任感まで消え失せることはない。悩みは尽きないが、結局、人口崩壊の足音が聞こえるというのにそんな私情に構ってはいられないという考えに落ち着く。
 
当代の日本人の中から難局を乗り切るための名案を出す知恵者が現れないと、かけがえのない日本民族が地球上から消えてしまう。私は言葉を発することが商売の知識人とは違う。かつては有言実行をつらぬく「反骨の官僚」として知られた。行政官時代の私は、「ミスター入管」として出入国管理行政上の難問難題を解決に導いた。

世間から非難罵倒がエンドレスに続く入管生活で学んだことがある。おそれをなして誰も手を付けようとしない問題に挑めば成功する確率が高いということである。入管時代の私はまけいくさは一度も経験していない。世界に冠たる移民国家の創建は実現不可能の計画のように映るかもしれないが、私なりの成算があっての挑戦である。天の時と人の和がそろった。機が熟した。天命が下った。

一般社団法人移民政策研究所に背水の陣を敷くミスターイミグレーションが天下を動かす壮挙に打って出る。1億2800万人の日本人の中から暴勇に共鳴する国士が大挙して立ち上がる可能性にかける。