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大きな夢を描けば美しい花が咲く

 「夢を描かなければ実は結ばない。大きな夢を描けば美しい花が咲く」。これは自分を元気づけるために作った箴言である。私の場合、年をとるにつれて夢がどんどんふくらんでいった。そのため夢をつかまえるのがますます困難になった。

 そんな私は至福の時を過ごしてきたと言えるのだろうか。じつは必ずしもそうとは言えない。国家公務員を辞した後の18年間、遠大な国家目標の重圧に押しつぶされそうになり、夢を追い求める人生にピリオドを打ちたいと思う時もあった。理想に立ちはだかる現実と妥協すればどれほど気が楽になるかという危険な考えが頭をもたげる時もあった。国民の評判が悪い「移民」という言葉を極力使わないようにしようと思い詰めた時もあった。
しかし、この7年ほどは打って変わって今が勝負の時だと判断し、力強い著作を連発している。その代表作が前記『JAPAN AS AN IMMIGRATION NATION』である。

 欧米の主要移民国家が移民・難民に対して一斉に門戸を閉じる方向に暴走する中、この英文著作は世界の移民政策をリードする気概を持って書いた。身も心も完全燃焼し、人類共同体思想をキーワードにすえる移民国家の理想像を描いた。私の夢がつまった畢生の大作である。

 そのかいもあって日本の若い世代の多くが移民受け入れに賛意を表するところまできた。世界の若者が反移民に走る中、誠意を持って移民を迎える用意がある日本の若者を誇りに思う。
  
 遠からず若者が中心となって運営される移民国家ニッポンが誕生するだろう。50年後の日本は移民国家の頂点に立っているだろう。

 いま現在の私は移民国家創造の道の八分までの仕事を成し遂げたと手ごたえを感じている。時代は移民国家の創建の方向に針路を取った。歴史の歯車は移民社会の創生に向かってダイナミックに動き出した。私は移民政策のオピオンリーダーの重責を果たした。移民社会の理想郷をつくる仕事は、これまで移民政策の件で政治責任を果たすことのなかった政治家の仕事として残す。

 私は一人の人間がオールマイティの活躍をするのは国の将来に禍根を残すという信念の持ち主である。論文人生がピークに達した2023年の今が身を引く時であるという気持ちに襲われた。移民政策の旗手を務める坂中英徳を移民国家日本の象徴に祭り上げ、オールジャパンの総力を結集して理想の移民国家を建設していただきたい。

 私の夢を一つ言わせてもらえば、夢から解放された人生を味わってみたい。今日までひたすら夢を追いかけてきた。やり残した夢の実現は若者世代にゆだねたい。

 私の究極の夢である人類共同体社会の創造は、世界の恒久平和を願う世界の人々の悲願である。未来永劫にわたり世界の知性がチャレンジするだろう。願わくは唯一の戦争被爆国の日本の若者がその先頭集団を走ってほしい。人類の全滅をもたらしかねない大量核兵器の存在が現実の脅威となる時代に入り、人類共同体社会の成否に人類の生死がかかることになった。それを坂中英徳の一場の夢にすることは人類の良心が決して許さないだろう。

 日本の移民政策研究所の所長から人類総員への衷心よりのお願いがある。悠久の人類史で蓄えた各民族の英知を結集し、あまたの戦争の歴史から真摯に学び、かつ「人類は同種で同胞」の原点に立ち返り、人類総がかりで人類共同体社会の創造にチャレンジしてほしい。