在日朝鮮人――身代金を脅し取られる存在

坂中提案

北朝鮮の核とミサイル開発の脅威が一段と増す中、以下に北朝鮮帰国運動の裏面史を記す。

そもそも在日朝鮮人を朝鮮総連の活動から離脱させないことが、北朝鮮当局が帰国者を「人質」にとった理由である。しかし、その後、日本の家族から金品を搾り取る金づるとして帰国者を利用する「人質政策」を確立する。1971年に朝鮮総連の幹部たちが子供を「いけにえ」として帰国させたが、遅くともそのころ金日成主席は「人質の効用」を知ることになったと考えられる。

1970年代の後半になると、北朝鮮政府は日本から帰国者に送られてくる金品にねらいを定めた。それまでは衣料や食料品などの生活物資を送ってほしいという手紙ばかりだったが、当局の指示で50万円、100万円単位の現金を送ってほしいという手紙が日本に届くようになった。やがて500万円ほどの賄賂を当局の幹部に贈れば身内の帰国者の平壌への移住も可能になった。

そして、帰国者の処遇が賄賂の額で左右されることが知られるようになると、政府首脳に億単位で寄付する家族まで現れた。これは「地獄の沙汰も金次第」のたとえを地で行くようなものだ。そこまで送金方法・送金額がエスカレートすると、身内の帰国者への支援という性格は一変する。日本の家族は北朝鮮政府から「身代金」を脅し取られる存在に変わり果てる。

日本在留のコリアンが送金すればするほど、北朝鮮政府は日本の家族から金を吸い上げる「人質政策」を固めていく。一方、日本の家族は理不尽な集金システムから抜け出せなくなる。在日コリアンが善意でした送金がいつの間にか核とミサイル開発を支える資金源の役割を果たすものに変質した。そればかりか、身内を人質にとられ、北朝鮮政府に逆らえなくなった在日朝鮮人が日本人拉致に協力させられる事件まで起きた。

世界の歴史において本国政府が海外に居住する国民に対して行った処遇でこれ以上の無慈悲なものがあったのだろうか。それにしても祖国からこれほどまで虐げられても、在日コリアンは黙って耐えたものだ。金を送るコリアンと金を吸い上げる北朝鮮政府との間には持ちつ持たれつの関係もあったのではないかと疑いたくなる。

強固なる北朝鮮包囲網が形成されつつある今も、在日コリアンの大金持ちの中には北朝鮮政府の脅しに唯々諾々として従い、巨額の身代金を北朝鮮に送っている商工人たちがいる。

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