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国際人口移動と入国管理

日本の移民政策のあり方との関連で、21世紀の世界において国際人口移動はどうなるのか。現代の世界秩序の下で主権国家に認められている入国管理の権限行使はどうあるべきか。このふたつの基本問題について概括的に述べておきたい。

人類の歴史を振り返ると、生存のため、あるいはよりよい生活を求めて人が新しい土地に移り住む、地球規模での人の移動と定住の歴史であったと見ることができる。今日、人類は多くの民族と国民に分かれて世界各地で生活しているが、これらの民族や国民はすべて新天地を目指して移住してきた人たちと、その子孫によって形成されたものである。

人類はこれからも、生活の糧を得るため、あるいは快適な生活を求めて、国内のみならず国境を越えて活発に移動するに違いない。

国際間の人口移動(移民)についていえば、地球上に人口分布と経済発展の不均衡が存在する限り、人口稠密で労働力過剰の国から人口希薄で労働力不足の国への人の移動、貧しい国から豊かな国への人の移動が絶えることはないであろう。

要するに、世界人口の圧倒的多数を占める開発途上国において移住促進要因が存在する限り、国際人口移動の勢いは止まらないということである。

一方、日本を先頭に先進国は押しなべて人口減少期に突入し、間もなく人口がマイナスに転じるのは確実である。

このような人の移動の歴史と今後の世界人口の動向等を踏まえて21世紀の世界を展望すると、100億人の大台に向かって人口が爆発的に増加し、人の国際移動の要因である人口問題と南北問題が一段と深刻化することを背景に、開発途上国から先進国へ向かう「人の大移動」が地球的な広がりをもって展開されることは不可避である。

同時に、人口減少時代を迎える先進諸国においては、国家と経済の生き残りをかけての人材争奪戦が激化する。

しかし、以上のような状況が出現することは、人が自由に国境を越えて好きな国に移住できる時代の到来を意味するものではない。21世紀の世界の基本秩序が「領土」と「国民」を本質的要素とする主権国家体制であることに変わりはない。地球上から国境と国籍の障壁は簡単にはなくならない。人の国際移動の自由を制約する原理としての「国境」の壁は残り、国家が人を「国籍」により国民と外国人に区分して処遇する国際法秩序は維持されると考えている。

主権国家が併存する国際連合体制が続く限り、世界各国は、自国にとって好ましい外国人の入国を許可し、自国にとって好ましくない外国人の入国を拒否する「入国管理」の権限を厳格に行使する。なぜなら、国民生活を守り、国民文化を保持することが、国民共同体としての主権国家の存在理由そのものであるからだ。

今日の人類が帰属する集団の基本的な枠組みは、民族、文化、宗教、言語、歴史体験、習俗などの共通性に基づき歴史的に形成された国民共同体としての国家である。現代の世界には、数千年の歴史を生き延びてきた諸文明と、諸文明から派生した諸国民文化が、それぞれ固有の存在意義を持って厳存していること、諸国民の間に国民文化への愛着心と自国への帰属意識が根強く存在することも否定できない事実である。

世界秩序としての主権国家体制・国民国家制度はなお発展途上にあり、世界各地で新国家の誕生と再編の動きが見られるであろう。あるいは、EUのような国家連合が進む一方で、中国、ロシア、フランス等の帝国主義国家に編入されている少数民族が次々と独立を果たし、自前の国家を持つ国家全盛時代に向かうかもしれない。

人類が国家に帰属し、国家がその構成員の利益を守る国民国家制度は、今世紀以後もしばらく続くと考えるのが現実的な見方である。人類が人類社会に帰属し、新しい世界秩序(たとえば統一的な地球共同体体制)を確立するのは、かなり先のことだと思われる。あるいは、100後の人類社会において、中央集権型の世界政府体制よりも各国の自治が許される分権型の国民国家システムのほうが、人類の英知を集めた最善の世界秩序という世界的コンセンサスが形成される可能性も排除できないと予想している。

ここまでの話を要約すると、これから100年間で100億人規模にまで人口が増加し、人口の国際移動が空前の規模で展開される可能性が高い中、主権を有する世界各国が国際人口移動をいかに適正にコントロールするかが、21世紀の人類の存亡がかかる課題に発展するということである。

少なくとも100年は続く人口激減時代に入った日本は、中国を筆頭に、巨大人口を擁し、国際人口移動における「送出圧力」の強い国々が周辺地域に存在する国際環境を考慮すると、より強固な国境管理の「堤防」を築かないと、人口空白の地域が目立つ日本列島に押し寄せて来る人口流入を食い止めることはできない。

日本の入国管理当局は、国際法の原則にのっとり、主権国家の持つ入国管理の権限をあますところなく行使すべきだ。人口激減の日本への無秩序な人口移入を許してはならない。入国管理に遺漏なきを期してもらいたい。

一方で私は、海外からの人口流入圧力で「国境の堤防」が崩壊する事態を回避するためにも、1000万人の移民の秩序ある受け入れを図るのが得策だと考えている。万一のダムの決壊もしくはオーバーフローを避けるために、思い切って水路の一部を開くのである。