国勢は人口で決まる

国勢は人口で決まる。少子化に歯止めがかからないと国勢は衰退する。人がいなくなれば人間社会は成り立たない。生産人口が激減し、働き手が確保できなくなれば中小・零細企業は次々消失していく。消費者の減少が続けば、国内消費は低迷し、不景気が常態化する。
少子化問題は何らかの政策的手当によって今後出生率が若干上向くとしても、その影響が出てくるのは遠い先の話だ。政府の将来人口推計が示すとおり、少子化傾向が100年は続くと考えるのが自然だ。
私は、すべての産業分野に技能職・専門職を中心に1000万人規模の移民を入れ、移民に産業の担い手となってもらうとともに、社会の一員として税金や社会保障費を負担してもらう必要があると訴えている。しかし、人口激減を国の存亡のかかる重大問題とまで考えない政府は、私の問題提起に聞く耳を持たなかった。ここまで人口崩壊の危機が深まると、もう何を言っても無駄な努力なのかもしれないと思う時がある。しかし、憂国の念に駆られる私は移民国家日本が生まれる日まで警鐘を鳴らし続ける。
まずは後継者難の農林漁業、職人的な技術を売り物にする町工場に移民を重点的に入れる。さらに高齢社会に不可欠の介護や医療の分野にも移民を積極的に入れる。それだけでは十分とは言えない。トヨタ自動車、日立製作所などの巨大産業グループも超少子化の進行で専門技術者の確保が難しくなって悲鳴を上げている。日本経済を支える世界企業にも外国人材を十分供給する必要がある。
移民政策は「活力ある日本経済」を打ちだすのに抜群の効果があると考えている。若者が中心で消費力が旺盛な移民人口が新たに加わると、日本経済の先行きに対する懸念材料である消費人口の激減が緩和される。移民関連産業が勃興し、教育、住宅、耐久消費財など移民関連の有効需要が生まれ、デフレ経済からの脱却の見通しが立つかもしれない。多言語を駆使する外国人材の加入で日本企業の国際競争力が強まる可能性もある。
以上とおり、政府が大規模の移民を計画的に入れることを決断すれば、日本経済の弱体化の動きに歯止めがかかるかもしれない。コミュニティの崩壊危機が進む農山村地帯の再生のきざしが出てくるかもしれない。日本社会に蔓延している「座して死を待つ」という態度が一番よくないと強調しておく。
私は移民1000万人の受け入れは十分に可能だと思っている。移民の適正な受け入れに必要な社会的基盤として、日本には移民が働くための産業基盤も、日本語教育などを実施するための教育機関も整っている。そして何よりも、礼節を知る日本人には移民の立場を思いやる心がある。
現在の日本の永住外国人(移民)の全人口に占める比率は2%ほどと異常に少ない。1000万人という移民の数は、総人口に占める移民の割合を10%程度と考える数値である。これは、現在のイギリス、ドイツ、フランスよりもかなり低めの水準である。また、短期間のうちに1000万人を入れるわけではなく、たとえば毎年20万人ずつ、50年の長期計画により移民の割合を着実に増やしていき、最終的に現在の欧米の移民先進国の水準に近づけていくという考えだ。日本の経済力からすると、これは十分に達成可能な現実的移民政策である。移民の受け入れで苦悩しているヨーロッパ諸国を凌駕する移民社会を築けると考えている。
人口動態は「出生者」と「死亡者」と「移民」の三要素で決まる。現状のままでは今後100年間、出生数が死亡数を大幅に下回ることが不可避の日本においては移民政策をとること以外に人口の自然減の幅を小さくする手立てはないのである。政府が、移民政策がもたらす経済的・社会的効果を正しく認識し、日本産業の発展の最大のネックとなっている人材確保の問題を直ちに解決する革命的な移民政策を採用すれば、世界トップクラスの技術力・経営力・資金力を有する大企業が活力を取り戻し、日本経済は安定軌道に乗る可能性があると考えている。