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北朝鮮残留日本人と日本人配偶者の帰国の道を開いた

 二〇一四年五月二九日の歴史的な日朝政府間合意を受けて、北朝鮮にいる残留日本人・日本人配偶者の帰国問題に関し、共同通信の記者の取材があった。以下は、そのときの一問一答である。

問 北朝鮮政府は二〇一四年五月二九日、「日本人の遺骨や墓地、残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者、行方不明者を含む全ての日本人に対する包括的調査を全面的に同時並行して行う」と発表した。この日朝協議の合意で調査対象者が広がった。この北朝鮮の動きをどう見るか?

答 二〇一二年一一月のモンゴルのウランバートルでの日朝協議における合意よりも、今回は「行方不明者」が加わるなど調査対象者がかなり広がった。特に、調査の結果、日本人であると判明した場合の「帰国」が明記されたことは大きな意義がある。

問 北朝鮮残留日本人をめぐる日本政府のこれまでの対応の問題点?

答 日本への帰国を待ち望んでいた北朝鮮残留日本人を見殺しにした日本政府の責任は重大である。せめての罪滅ぼしとして、北朝鮮に生存するすべての日本人を救出しなければならない。

問 なぜ、在北朝鮮日本人の帰国は、一九五六年に三六人が帰ってきた以外に実現することがなかったのか?

答 日本政府が日本人の命を守るという国の第一の使命を忘却してきたからだ。北朝鮮からの引き揚げがかなわなかった日本人の救出に冷淡な日本国民の薄情さに怒りを覚える。歴代の内閣が粘り強く北朝鮮に日本人の帰国を要求していたならば多数の日本人を無念の死に追いやることはなかった。多くの日本人が生きて日本の土を踏むことができたはずだ。これは戦後の日本が犯した最大の過ちの一つと言わなければならない。

問 今回、北朝鮮政府はなぜ坂中さんが訴えてきたことに乗ってきたのか?

答 正確なところは知らないが、一九七五年の坂中論文以来、在日朝鮮人の法的地位問題、北朝鮮に渡った日本人妻の帰国問題と取り組んできた唯一の専門家であることを北朝鮮政府が評価したのではないか。私が二〇〇九年から日本人妻の帰国、北朝鮮残留邦人の帰国を北朝鮮に求めると、北朝鮮政府からすぐに前向きの反応があった。特に近年は、北朝鮮残留日本人、日本人妻、拉致被害者の一体解決を主張してきたが、私のアイディアに北朝鮮政府が乗り、最終的に日本政府がそれに応じたということである。

問 在北朝鮮日本人の帰国支援に一人で取り組んでこられたが、具体的に何をしたのか?

答 たとえば、北朝鮮からの日本人の帰国が近いと予想し、二〇一二年一月、移民政策研究所内に「日本人妻等定住支援センター」を設立した。支援の対象者は「日本人妻」と「北朝鮮残留日本人」である。日本人妻および北朝鮮残留日本人が帰国をはたした暁には、祖国で天寿を全うしていただくため、生活相談やカウンセリング、日本語教育、家族との再会に向けた支援などを行なう。

問 現在、北朝鮮からどのくらいの日本人が日本に帰国し、どのくらいの日本人がまだ北朝鮮に残っているのか?

答 日本人妻(六人)や日本人妻の子を中心に数十人の日本人が日本に帰ってきている。北朝鮮で生活している日本人の数は不明である。生きている日本人の多くは六〇以上の高齢者だと推察する。
 なお、一九五九年から八四年にかけて北朝鮮への帰還事業で在日朝鮮人の夫と海を渡った日本人妻(約一八〇〇人)おびその子(約五〇〇〇人)は、日本国籍保有者に限っても、約六八〇〇人にのぼる。それ以外に、北朝鮮への出国に際し、日本国籍を離脱した血統的日本人が相当数いると思われる。これらの人たちも救出しなければならない。

問 今後、国は何をなすべきか。国民に何を望むか?

答 少なくとも数千人の日本人が帰ってくると見込まれるから、国の責任で受け入れ態勢に万全を期する必要がある。北朝鮮から帰ってくる同胞にどのような態度で臨むかは、日本人の品性が問われる問題である。世界の人々も注目している。暖かい心で迎えてほしい。