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出入国管理行政発足25周年記念論文

1975年2月、法務省入国管理局では、同年10月に出入国管理行政発足25周年を迎えるのを記念して、「今後の出入国管理行政のあり方について」の課題で全国の入国管理局の職員から論文を募集した。当時、法務省入国管理局参事官室の法務事務官の私の書いた論文「今後の出入国管理行政のあり方について」が優秀作に選ばれた。

この論文において「在日朝鮮人の処遇」の項を立て、「いわゆる法1-2-6該当者を中心とする在日朝鮮人をこのまま放置しておくことは、国際紛争や社会秩序の危機の原因となるなど将来の日本に禍根を残すこととなる」という問題意識から、在日朝鮮人の処遇の基本的なあり方について検討した。その中で、在日朝鮮人処遇策を、①同化(帰化)政策、②子々孫々に至るまで外国人として処遇する政策、③勧奨又は強制により帰国させる政策の三つに分けて論じた。その上で結論として、次のように述べた。

「在日朝鮮人の処遇策は、国民にとっても在日朝鮮人にとっても納得のいく合理的なものでなければならず、長期的かつ総合的な観点から検討されるべきものであるが、入国管理局としては、まず先決問題としてその法的地位をできるだけ早く安定させ、その後においては、関係行政機関の協力を得てこれら在日朝鮮人が日本社会において円満な生活ができる環境づくりに努めることが必要であると考えられる」

出入国管理行政発足25周年記念論文「今後の出入国管理行政のあり方」は入国管理局職員の執務参考資料である『入国管理月報』(第176号、1975年10月)に掲載された。同時に、その抜き刷りが外部の関係者にも配布された。その後しばらくして、この論文、とくに「在日朝鮮人の処遇」の項は、在日韓国・朝鮮人問題の専門家や研究者の注目するところとなり、幾つかの文献の中で引用され、論評された。その一つとして、次のような論説がある。

「これら立論の出発点として、常に『定着化』が前提とされ、不安定なままでの定着は『国際紛争や社会秩序の危機の原因』となるとみていることは、注目に値する。同化を強要する従来の法務省の言い方では、『日本においてやっているのだから、言うことを聞け』というニュアンスが強かった。つまり、法的地位を不安定なままにしておくことで、同化かもしくは追放かという二者択一を迫り、そのバランスの上で政策決定をしてゆくという感が大きかった。しかし、先に引用した坂中論文では、『否が応でも朝鮮人は日本に定着してしまう。もはや、不安定な法的地位をテコにした統制という発想だけでは対処しきれなくなることは眼に見えており、これからは、むしろ総合的な政策としての同化政策を推し進めることで、国益にあった法的地位の『安定』(つまり帰化か)を計り、将来の日本に禍根を残さぬようにせねばならぬ』という、一歩踏み出した感触が濃い」(和田純・内海愛子「岐路に立つ在日朝鮮人問題(1)――法務省・総聯の『定住化』認識――」(『朝鮮研究』第169号、1977年8月)。