全人類に開かれた移民国家ニッポンを目指す

坂中提案

移民先進国の外国人処遇の歴史を概観すると、決して道理にかなったものばかりだったというわけではない。人種差別の意識とイスラム教徒に対する恐怖心が国民の心にインプットされている欧米諸国では移民の同化はあまり進んでいないようだ。それどころか、いまヨーロッパでは「宗教の崩壊と外国人恐怖症の急増」(エマニエル・トッド)が急激に進んでいる。

そのように認識するわたしは、移民後発国の日本は移民先発国の轍を踏んではならないと肝に銘じ、「万物は平等」と「人類は一つ」という日本人固有の思想を日本型移民国家の理念に体現した。

私が提唱する全人類に開かれた移民国家の構想は、白人至上主義とキリスト教の一神教の考えが根底にある西洋精神と対極をなす日本精神から生まれたものである。それは、地球にすむ人間・動物・植物のすべての生命体に神がやどると考える日本人の汎神論的世界観の産物である。

米国は建国当初、大量のアフリカ人奴隷を英国商人から買った国である。現在は、1100万人の不法入国者が過酷な労働条件のもとで農業労働者などとして働いている。

ヨーロッパの移民先進国は、根深い人種偏見と宗教問題があって、国民と移民との社会統合に成功していないようだ。

ドイツは数百万人のトルコ人を外国人労働者で受け入れたが、ドイツ人とトルコ人の結婚の比率は1%以下と異常に低い。かつては多数派のドイツ人が小数派のトルコ人を襲撃する事件が相次いだ。

フランス人とアフリカ人の婚姻率は20%を超えると聞いている。博愛主義の伝統があるフランス人の民族差別はさほどでもないから、フランスは多民族共生社会への希望が持てる国である。ただし、その実現のためにはキリスト教とイスラム教の宗教対立の克服という難問が残っている。

近世から20世紀半ばに至るまで、西欧人が宗教、人種、風俗の異なる民族を人間以下の存在として、少なくとも自分たちよりも劣等の民族として扱ったことは、世界人権史の汚点として刻まれている。

だが日本においては、神道、仏教、キリスト教など多様な宗教が平和共存している。くわえて、日本人のこころの奥には文明化した現代世界では極めてユニークな宗教心、すなわち地球上に存在するあらゆる物と心を通わせ、それを信仰の対象として尊ぶ心がある。動植物の仏心を描いた江戸時代の伊藤若冲の絵画をこよなく愛する民族である。河童伝説や妖怪伝説の主人公を崇める民族である。鉄腕アトムやゴジラを創作した民族である。

これは仮説の域を出ないが、万物平等思想を抱き、万物に神の存在を認める日本人は、世界のどの民族も成し得なかった人類共同体社会をつくる資格がある唯一の民族ではないか。

移民1000万人構想は、50年の年月をかけて、現在のイギリス、フランス、ドイツ並みの「十人に一人が移民」の国へ移行するものだ。さまざまな民族の心を一つにする親和力の強い日本社会の特色に照らし合わせて考えると、それは十分達成可能な目標である。そればかりか、地球上のあらゆる人種・民族に甲乙はないと考える日本人は移民先進国の上をゆく移民国家を築くであろう。

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