入管法コメンタールと移民革命論の形成

坂中提案

坂中英徳の移民革命理論が形成された精神土壌に関心を持つ向きもあるかもしれない。自問自答になるが、日本の外国人政策の基本方針を定めた「出入国管理及び難民認定法」のコメンタールを執筆し、法律の限界と課題を含む、入管法全体を熟知していることが、それと多少の関係があるのではないかと考えている。

入管法の徹底的研究から移民革命思想が生まれたのではないか。そこから入管法ではカバーできない「移民法」や「多民族共同体」の発想が出てきたのだと思う。それが唯一の理由というわけではないだろうが。

1994年の初版以来、コメンタールの世界では異例の「序論」の章を立て、人口の国際移動の背景にある人口問題と入国管理政策の関係などについて考察してきた。何故、入管法の逐条解説の序論で入国管理政策のあり方を論じたのか。それは、私の「さが」だとしかいいようがない。

外国人政策一本槍の役人の道を歩んできたので、現行法の解釈よりも政策立案(入管法の改正、新法の制定)など政策方面への関心が強かったということである。コメンタールを書きながらも、頭のなかでは法律の問題点や法改正の必要性など外国人政策のあり方についていろいろ考えていた。

序論は時代の変化に対応し変化発展していく。日本が2005年をピークに人口減少期に入ると、移民政策について本格的に研究を始めた。

改定第三版(2007年)において「人口減少社会の日本の外国人政策」の表題の項目を設け、その冒頭部分で次のような問題提起を行った。

「一国の人口の推移は、人の「出生」「死亡」「国際移動」の三つの要因によって決まる。出生者数が死亡者数を大幅に下回る「人口の激減」が進む国においては、国際間の人口移動を管理する「出入国管理」の果たす役割がひときわ重要になる。外国人の受け入れのあり方いかんによって、人口動態と社会形態が左右される。人口減少社会への対応の切り札として、外国人受け入れ政策が浮上することは確実である。」

その結論部分では、私が夢想する「日本の未来像」について述べた。

「まず内閣が、「多民族共生社会」の実現を国の基本方針とすることを決める。そして、世界から多士済々が移住したいと憧れる「移民国家ニッポン」を目指し、民族や文化の異なる人を正当に評価する社会へと、日本社会の体質改善を国民に呼びかける。同時に、移民受入れ政策の立案、多民族の国民統合などを担当する「移民庁」を設置する。家庭、学校、職場、地域社会においては、外国人との共生運動を展開し、外国人と交わり切磋琢磨することで新たな可能性を発見し、活路を見出そうと考える日本人が増える社会環境を整える。」

2012年の改定第四版ではその序論が消えた。なぜか。2005年以降、体系的な移民政策理論の構築につとめ、その研究成果の著作「日本型移民国家への道」(東信堂、2011年)と「人口崩壊と移民革命」(日本加除出版、2012年)を発表した。この二つの著作の刊行をもって日本型移民国家の理論的研究に一応の区切りがついたからである。

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