人類共同体思想が世界を変える
私は2014年4月、南カルフォルニア大学日本宗教・文化研究センター主催の「日本の移民政策に関するシンポジウム」において基調講演を行なった。
「Japan as a Nation for Immigrants :A Proposal for a Global Community of Humankind」のタイトルでスピーチした。約40名の研究者が熱心に聞いておられた。多くの質問が寄せられた。私の熱い思いは世界の知識人に伝わったと思う。
主催者のダンカン・ウィリアムズ南カリフォルニア大学准教授(日本仏教学の権威)は、「坂中さんの移民政策を世界に紹介する『小さな企画』です」といわれた。日本人の血筋を引くダンカンさんは謙虚な人だが、私にとってそれは「人類共同体思想を世界に披露する最高の舞台であり、『大きな企画』であった」と感謝している。何よりも日本語のスピーチ原稿「日本の移民国家ビジョン――人類共同体の創成に挑む」を格調高い英文にしていただいた。
そのときすばらしい英語に訳された人類共同体思想すなわち「人種・民族・宗教の違いを超えて人類が一つになる移民国家の理念」が世界に羽ばたき、世界の移民政策に深刻な影響が及ぶと直観的に思った。
さて2016年を境に移民政策をめぐる世界の空気は激変した。当時のトランプ米大統領を筆頭に欧米諸国で移民排斥を主張する勢力が台頭した。移民問題は世界が緊急に解決を迫られる人類史的課題に発展した。そのとき私は今こそ日本が人類共同体の理念を掲げて世界に打って出る時であるという考えが浮かんだ。
日本の移民開国は世界の人道危機を救うのみならず、人種間の対立と国家の分断が進む米国の窮地を救い、日米同盟の深化をもたらすと、2021年現在の私は考えている。