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人間社会に「単純労働」という言葉は存在しない

2018年10月12日、政府が発表した新しい外国人材の受入れ制度に関し、政府が移民政策を打ち出すことを快く思わないメディアや知識人は、「単純労働に門戸開放」「外国人労働者の受け入れを単純労働の分野に広げる方針」など「単純労働」という言葉を盛んに使って反移民の世論を煽っている。

政府の新方針は「熟練した技能を持つと認定された外国人材に限って日本での永住と家族の帯同を認める、事実上の移民政策への転換」と理解するのが正しい見方である。
 
政府が在留資格の創設を検討して業種は、農業、介護、飲食料品製造業、建設、造船・舶用工業、宿泊、外食、漁業、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械産業、電子・電気機器関連産業、自動車整備、航空。これらの仕事のどこが単純労働なのか。専門知識・技能・技術を必要とするこれらの職業は俗に言われる単純労働なんかでは決してない。私の辞書に「単純労働」という言葉は存在しない。入管法の世界にも単純労働という概念は存在しない。

産業史をさかのぼると、狩猟採集時代、農業革命時代、産業革命時代のいずれの時代も、人類は知恵をしぼって最善の産業技術を駆使して悠久の歴史を生き延びてきたと認識している。

日本の新聞記者、大学教授、文化人などは高度の専門知識が必要とされる職業に就いているとうぬぼれているのか。農業、工業、商業などの実業に就いている人を見下すような態度は看過できない。およそ人間の行なう仕事に貴賤はないと虚業家集団に申し上げておく。 

すなわち、農林水産業は縄文時代から日本人が産業技術を継承・発展させてきた歴史的産業遺産である。自然の営みに感謝しながら食料を生産し、魚介を採り、樹木を育てるもので、日本人の叡智のかたまりの尊い産業である。このような第一次産業のなりわいをあたかも価値の低いもの、いわゆる単純労働とみなすのはまちがっている。それは先祖代々の日本人が引き継いできた万物有魂論の自然観にも反し、日本の豊かな自然を冒涜するものだ。

日本人の心のふるさとが荒廃すれば日本人の心がすさむ。自然との共生思想が根底にある日本精神を子々孫々まで伝えるためにも、里山と里海に代表される「人間が自然に寄り添って生きる景観」を守る必要がある。後継者難の深刻化で日本の若者が総力を挙げてもその存続が不可能ということであれば、世界から若手の有望株を「農業」や「漁業」の在留資格で受け入れ、速やかに「永住」を許可し、安定した法的地位の「移民」で処遇するしか、農業と漁業の生き残る道はないのである。