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『人民日報』の坂中人物論

2007年11月24日の『人民日報』の国際面に「寛容平等『和為貴』――訪日外国人政策研究所所長坂中英徳」という記事が掲載された。人民日報東京支局長が書いた見事な漢文である。以下はその主要部分の日本語訳である。

〈坂中英徳氏(62歳)は、かつて日本の国家公務員として、法務省名古屋入国管理局長、東京入国管理局長などを歴任した。35年間、出入国管理行政に携わってきた。退職後は、課題として残った仕事を成し遂げるため、日本の移民政策を引き続き研究することを決心し、移民政策研究所を設立、運営していると坂中氏は語った。若いころに唐詩の世界に陶酔した坂中氏は、竹林に会し、天下のことを清談した中国古代の賢人雅士の生き方に憧れていた。この移民政策研究所は、坂中氏の長年の夢が実現したものではないか。
坂中氏の第一の提言「移民が日本の危機を救」ということである。この提言は、最近、日本のメディアと世論の注目を浴びることになった。日本はすでに「少子高齢化」の時代に入り、人口減の勢いが止まらない。専門家の推計によると、50年後の日本人口は今より4000万人も減ると予想されている。日本が1億の人口を維持しようとするならば移民を受け入れるしかないと考える坂中氏は、今後50年間に1000万人の移民を受け入れることを提唱した。
多民族共生社会を樹立することが、坂中氏のもう一つの「新しい提言」である。大量の外国人を受け入れるには、日本人と他の民族がお互いの立場を尊重しあって生きる「多民族共生社会」を作るという、日本人の覚悟が求められると坂中氏は説く。古来、日本は和を尊ぶ国柄であった。日本人が外国人と良好な関係を築くためには、異なる民族を平等に待遇しなければならないと語った。〉

2007年当時、中国共産党の機関紙に載った破格の坂中評価に戸惑いを覚えた。それから11年余が過ぎた今の私は、世界のメディアによる坂中移民国家構想に対する評価の一つとして喜んで受け入れる。最近これを再読し、この記事は坂中英徳というひとりの日本人の本質に迫る人物論としても出色のものであると思った。さらにそれは中国人の日本人観を正すのに多少の貢献をしたのではないかと思った。

私は前記の『人民日報』で坂中移民政策論が紹介された日と同じ日(2007年11月24日)、中国の清華大学において「人口減の日本は『世界の若者が移住したいと憧れる国』を目指す」と題して話をした。講演の冒頭で「日中関係の未来像」について中国のエリートに語りかけた。以下は、そのスピーチ原稿のさわりの部分である。

〈日本の人口減少は、隣国の中国にとってどのような意味を持つのだろうか。中国は、人口減の日本に安心感を抱くであろうと考えている。人口が激減する日本は、日本文明の持つ底力によって世界有数の文明国の地位を維持し、日本社会全体が平和と安定を志向する「成熟社会」へ大きく変わるからだ。
 中国も、これから少子高齢化が急速に進み、20年以内に人口激減時代を迎える。日本が人口減少問題と取り組んだ経験が、将来の中国の参考になれば幸いである。
 人口減少期の日本は、世界各国から相当数の移民を政策的に受け入れる必要がある。その場合、日本が入国を認めた移民には、日本語すなわち漢字の読み書きをしっかり学んでもらわなければならない。様々な民族を日本国民として一つにまとめるには、日本語(漢字)の力を借りる必要があるからだ。日本語には日本人のものの考え方も価値観もすべて含まれている。外国出身者が日本語を習得すれば自然と日本社会と一体化するだろうと見ている。巨大な中国が有史以来、多様な民族を漢字で束ねてきたのと同じ原理である。
 日本人は今後も漢字文化を大切に守っていくと思う。今日の世界で漢字を国語として使用している民族は、漢字を発明した中国人と、中国人から漢字を学んでひらがなを考案した日本人だけである。未来の日本と中国の関係を考えるとき、漢字文化を共有していることの持つ意義は大きいと考えている。「漢字」を通して、日本人と中国人は意思疎通を図り、相互理解を深め、友情を育むことができるからだ。〉