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人口危機をロボットが救う?

2005年は日本の歴史的転換の年であった。政府予測では、日本の人口は2007年から減少へ転ずるとされていたのだが、実際は2005年から減りはじめたのだ。明治時代からほぼ一貫して増え続け、日本の経済と社会の発展を支えてきた人口が減少局面に入ったのである。それも50年後の人口は今の三分の二に落ち込み、100年後は明治初期の4000万人台の人口にまで減るという。

2008年1月7日の「ワシントン・ポスト」に「人口危機をロボットが救う?――労働人口が減少する日本は移民を拒み、テクノロジーに頼る」という長文の記事が載った。人口危機に向かって進んでいる日本が選ぶのは日本人の好きなロボットであって苦手な外国人ではないだろうと、日本の姿勢を皮肉ったものだ。

ワシントン・ポストのブレイン・ハーデン東アジア総局長(当時)は、「日本政府は高齢化社会を救済するためサービス用ロボットの開発に多額の補助金を出している。本来は移民の受け入れを検討すべきだが、これは厄介な問題だから避けているのだ。政治や企業のリーダーたちは、その場しのぎの弁解のためロボットを前面に押し出している」と書いた。私はワシントン・ポストのインタビューに応じ、以下のように述べた。

〈ロボットは有益であるが、人口減少問題の根本的な解決にならない。日本政府は、移民を受け入れ、教育し、支援するという、もっとまっとうなことに金を使ったほうがよい。日本が経済大国の地位を維持しようというのであれば、ロボットではなく人間が必要である。それも今すぐ海外から人間を受け入れなければならない。これから50年間で少なくとも1000万人の移民を受け入れる以外、日本にとって合理的な選択肢はない。政治家は移民受け入れ問題に取り組まない。票に結びつかないからだ。政治家こそ日本の未来について考えるべきであるのに。〉

「1000万人の移民受け入れ」について、ワシントン・ポスト紙は、「坂中氏の提案を実現するのは難事業だ。もともと日本人は外国人が嫌いだし、外国人人口の割合はたったの1・6%である。坂中氏の移民受け入れ提案は、現時点では、政治指導者たちの支持を得ていない」とコメントした。

同記事によると、トヨタのロボット開発の責任者が、「私たちの狙いは、高齢者の外出をロボットが手助けすることである。もしマシンが存分に機能し、買い求めやすい価格になれば、将来の日本では一家に一台のロボットの相棒がいる生活が現実のものとなるだろう」と語り、「あなたは外国人を家庭に入れますか、それともロボットを所有しますか」と問いかけたということだ。

ワシントン・ポストの記者は、次の言葉でリポートを結んだ。「日本ではロボットが好まれているようだ」。