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世界一の夢想家が抱く夢

「夢を描かなければ実は結ばない。大きな夢を描けば大きな花が咲く」。これは自分を叱咤激励するため私が作った言葉である。私の場合、年をとるにつれて夢がどんどんふくらんでいった。そのため夢をつかまえるのがますます困難になった。

そんな私は至福の時間を過ごしてきたと言えるのだろうか。じつは必ずしもそうとは言えないのだ。2005年に国家公務員を辞めた後の15年間、夢の重圧に押しつぶされそうになり、夢を追い求める人生にピリオドを打ちたいと思う時がしばしばあった。理想に立ちはだかる現実と妥協すればどれほど気が楽になるかという危険な考えが頭をもたげる時もあった。政治家の評判が悪い「移民」という言葉は極力使わないようにしようと思い詰めた時もあった。

しかし、この数年は打って変わって、今が勝負の時だと判断し、以前にも増して精力的に移民政策論文を書いている。坂中移民政策理論の集大成と言える作品が、2019年に出た『日本型移民政策論集成』(移民政策研究所刊)である。その英語版の著作が、2020年に米国で出版された『JAPAN AS AN IMMIGRATION NATION』(LEXINGTON BOOKS)である。

欧米の主要移民国家が移民・難民に対して扉を閉じる方向にある中、この英文著作は、日本のみならず世界の移民政策をリードする気概を持って書いた。身も心も完全燃焼し、人類共同体コンセプトを中心概念にすえた移民国家の理想像を描き切った。近未来の人々は「坂中英徳のユートピア物語」と名付けるかもしれない。

それらの著作物の影響もあって、日本の若い世代の多くが移民の受け入れに賛意を表するところまできた。世界の若者が反移民に走る中、まごころを持って移民を迎える用意がある日本の若者を誇りに思う。遠からず若者が中心となって運営される移民国家ニッポンが誕生するだろう。50年後の日本は移民国家の頂点に上り詰めているだろう。

馬齢を重ねて75まで生きた2020年6月現在の心境を明らかにすれば、移民国家創造の道の八分までの仕事を成し遂げたと実感する。時代は移民国家の方向に針路を取った。歴史の歯車は移民社会の形成に向かってダイナミックに動き出した。移民政策のオピオンリーダーの重責を果たした。移民社会の理想郷を完成させる残り二分の仕事は、これまで移民政策のことで何ら貢献してこなかった政治家の仕事として残す。一人の人間が革命的な仕事の何もかも行なうのは国の将来のためにならないと、自分に強く言い聞かせている。

私の夢を一つ言わせてもらえば、夢から解放された人生を味わってみたい。今日までひたすら夢を追いかけてきたが、やり残した夢の実現は将来世代にゆだねる。

私の究極の夢である人類共同体社会の創造は、世界の恒久平和を願う人々の悲願である。未来永劫、世界の若者がチャレンジするだろう。願わくは唯一の戦争被爆国の日本の若者がその先頭集団を走ってほしい。人類の全滅をもたらしかねない大量核兵器の存在が現実の脅威となる時代に入り、人類共同体社会の成否に人類の生死がかかることになった。それを令和の日本人が抱いた一場の夢で終わらせることは人類の良心が許さないだろう。

極東の列島国に本拠を置く移民政策研究所の所長から人類総員への衷心からのお願いがある。悠久の人類史で蓄えた各民族の英知を結集し、あまたの戦争の歴史から真摯に学び、そして「人類は同種で同胞」の原点に立ち返り、人類総がかりで人類共同体社会を創る夢を現実のものにしてほしい。