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一刻も早く移民開国宣言を

  多数の移民政策論文集を上梓した実績が物を言って移民国家ジャパンの象徴的存在になるかもしれない。特に英文著作:『JAPAN AS AN IMMIGRATION NATION』は世界に類書がないので「世界の移民政策理論の金字塔」と評価されるかもしれない。だが、業績が評価される時代は、私にとって人物評価が百八十度ほど転換する未知の世界だ。歴史的な業績を成し遂げた人間の晩年が恥ずべきものになることは枚挙のいとまがない。「晩節をけがしてはならぬ」と自分に言い聞かせている。

  最近の私は、どのように生きれば人倫にかなう形で最期を迎えられるかを真剣に考えている。坂中論文の著者の名を傷つけることのないよう正論を語ること、論文を書く力が尽きたと自覚した時には移民政策研究所の看板を下ろすこと、これが私の思い描く引退のシナリオである。

  1975年の『今後の出入国管理行政のあり方について』から2020年の『坂中英徳 マイ・ストーリー』までの45年間、渾身の力をこめて書いた著作物が極左と極右の双方から身の危険を感じるような攻撃にさらされた。加えて劣化が著しい日本の知的世界は論文の存在自体を無視した。もとより論評の対象になることはなかった。前途が真っ暗の孤独感にさいなまれる日々が続いた。
 
  しかし、10年ほど前に悟りの境地に達し、彼らとは要するに棲む世界が違うと割り切った。そして人類共同体ビジョンを筆頭に明るい未来を展望するユートピア物語を書きつづけた。いつの間にかこの世での評価は気にならなくなっていた。世界の評価が気になるようになった。

  2020年晩秋の私は移民政策研究所の所長の立場で研究三昧の日々をエンジョイしている。365日、道楽として小論文を書いているのが頭の体操になったのだろう。創作能力の衰えは感じない。最近は頭がさえて筆が進む。独創的な論文に始まり独創的な論文で終わる人生――これ以上の生きがいに満ちた人生はないと思う毎日である。

  これはもっぱら未来志向の論文を書いた思想家の特権であるが、書物に刻印された人類共同体哲学は22世紀に生きる地球市民の生き方にまで影響が及ぶであろう。人類の未来永劫の存続の道を開いた論文人生を誇りに思う。