ワシントンポストが希望と自信を与えてくれた

坂中提案

2008年1月7日のワシントンポストに「人口危機をロボットが救う?-労働人口が減少する日本は移民を拒み、テクノロジーに頼る」(Demographic Crisis, Robotic Cure?  Rejecting Immigration Japan Turns to Technology as Workforce Shrinks)というタイトルの記事が載った。人口崩壊に向かって進む日本が選ぶのは日本人の好きなロボットであって苦手な外国人ではないだろうと、移民の受け入れに消極的な日本の姿勢を皮肉ったものだ。

ワシントンポストのブレイン・ハーデン東アジア総局長は、「日本政府は、高齢化社会を救うため、サービス用ロボットの開発に多額の補助金を出している。本来は移民の受け入れを検討すべきだが、これは厄介な問題だから避けているのだ。政治や企業のリーダーたちは、その場しのぎの弁解のためロボットを前面に出している」と指摘した。

私はワシントンポストのインタビューに応じ、移民1000万人構想を語った。

〈ロボットは有用であるが、人口減少問題の根本的解決にならない。日本政府は、移民を受け入れ、教育し、支援するという、もっとまっとうなことに金を使ったほうがよい。〉

〈日本が経済大国の地位を維持しようというのであれば、ロボットではなく人間が必要である。それも今すぐ海外から人間を受け入れなければならない。これから50年間で少なくとも1000万人の移民を受け入れる以外、日本にとって合理的な選択肢はない。〉

〈政治家は移民問題に取り組もうとしない。票に結びつかないからだ。政治家こそ日本の未来について考えるべきであるのに。〉

「移民1000万人の受け入れ」について、ワシントンポスト紙は「坂中の提案を実現するのは難事業だ。もともと日本人は外国人が嫌いであるし、外国人人口の割合はたったの1・6%である。坂中の移民受け入れ提案は、現時点では、政治指導者たちの支持を得ていない」とコメントした。

続いて、その1年後の2009年1月23日のワシントンポストの一面に、「失業した移民の就職支援を推進する日本ー人口減少への危機感が新しい施策を生み出した」(Japan Works Hard to Help Immigrants Find Jobs – Population-Loss Fears Prompt New     Stance)という見出しの記事が載った。これを書いたのは前年と同じブレイン・ハーデン氏である。私は彼の取材に応じ、最近の日本の移民政策の進展状況などについて説明した。

今度のワシントンポストは、リーマン・ショックに端を発した世界不況が深刻化する中、日本政府が「定住外国人施策推進室」を設置して行っている移民政策は革命的であると世界に発信した。そこに私の発言が引用されている。

〈失業した外国人が日本にとどまれるよう支援する政府の取り組みは「革命的」なものである。日本は長年、外国人の定住を拒んできた。仕事を失った外国人は母国に帰ってもらうというのが、日本政府がこれまでとってきた一般的な立場である。この新しい政策だけで日本が移民国家へ舵を切ったとまでは言えないが、将来日本の歴史を振り返るとき、これが移民国家への転換点だったことがわかるだろう。〉

〈日本政府の決定は、世界中の移民希望者に対する魅力的なメッセージになるだろう。仕事を求めて日本に来た移民は、深刻な不況の時でさえも、状況に配慮した適正な処遇が受けられるからだ。〉

〈日本はようやく日本語を話せない移民を受け入れる体制が整っていないことに気がついた。遅きに失したのは確かだが、政府が移民の受け入れ態勢の不備を直視するようになったことは意味がある。〉

2009年のワシントンポストは一面で私のことを「移民政策のエキスパート」と紹介のうえ、日本独自の「育成型移民政策」について報道した。破格の扱いである。

2008年のワシントンポストは「坂中の移民1000万人提案は政治指導者たちの支持を得ていない」と書いたが、2009年のリポートでは一変した。

〈世界で二番目に大きい日本経済を失墜させる深刻な人口危機をくいとめる方法は、大規模な移民の受け入れしかない。最近、そのような認識が日本の政治家や産業界のリーダーの間で広まっている。〉

〈昨年夏、与党の自由民主党の約80人からなる政治家グループは、今後50年間で1000万人の移民を受け入れる必要があると提言した。また、移民を「受け入れる」だけでなく、移民とその家族に日本語教育と職業訓練を行い、国籍取得を促す政策、つまり日本人を「養成」する移民政策を提言した。〉

ワシントンポストの二つの記事は坂中英徳の移民政策論を大々的に取り上げ、当時日本国内で孤立状態にあった私に希望と自信を与えてくれた。

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