ミスター入管が革命家になった

坂中提案

2012年10月21日の『ジャパンタイムズ』の「移民が日本を救う」というタイトルの記事において、坂中英徳著『日本型移民国家への道』を読んだ米国人ジャーナリストが、日本の移民革命を先導する坂中英徳を、「革命家の顔:元法務官僚、元東京入国管理局長」と世界に報道した。日本通の外国人が書いたこの記事は、日本事情に詳しい世界の知識人に衝撃を与えたと聞いている。

ミスター入管の異名を持つ元法務官僚がなぜ「革命家」と命名されたのか。保守の典型の私が革命家と呼ばれたのは晴天の霹靂であるが、おそらく人口危機の日本を救う大役を務める日本人は坂中英徳しかいなかったということなのだろう。時代の要請と研究テーマが偶然一致して、そのような立場になったということである。

45年間、日本最強のタブーの移民鎖国問題と向き合い、移民政策の立案をライフワークとする元東京入国管理局長が、急進的な移民革命理論を武器として、人口秩序の崩壊すなわち日本の崩壊をくいとめるために立ち上がった。

移民政策のパイオニアの道を歩んだのは、古典的論文『今後の出入国管理行政のあり方について』を40年前に書いたからだ。その時から移民国家のあるべき姿の究明に全力をあげてきた。そして近時、長年の実績が認められた。たとえば、世界のジャーナリストの間で坂中英徳はミスターイミグレーションの名で呼ばれている。

職業人生を振り返ると、一途な気持ちで移民国家の理想像を求めてきたが、特別の才能があったわけでも人並み外れた努力をしたわけでもない。どこにでもいる普通の元行政官に過ぎないが、あたかも天から白羽の矢が立ったかのように、移民革命の急先鋒の役が回ってきた。その時、日本の未来を創る決定的瞬間とめぐり合った天運に任せて、日本史上最大の革命を実践しようと決心した。天命であるから天職に殉ずるしかないと割り切って気持ちがすっきりした。その一方で、長い人生には人知の及ばぬ神秘的な出来事に出会うことがあるのだと思うと感涙をぬぐいきれない。

ところで、官僚の末席を汚したことがある私は、官僚組織が移民革命に対する抵抗勢力になれば、坂中移民国家構想は実現しないことを熟知している。そこで2015年の夏、霞ヶ関の中枢幹部たちと会って、今後の移民政策のすすめ方について腹を割って話をした。彼らは「先輩の日本型移民国家構想に賛成です。それしか日本再生の道はありません」と語った。そのとき、元法務官僚が立てた移民政策論が、霞ヶ関のエリート官僚たちの心をとらえたと感じた。

内閣官房の一部の官僚たちが坂中構想を支持する立場に立った。霞ヶ関の異端者であった革命家のまわりに政府高官たちが集まってきた。彼らは敵に回すと怖い存在だが、味方につければ最強の実動部隊になる。霞ヶ関の後輩たちが、私の志を引き継いでくれると信じて疑わない。

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